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8月31日
無精ひげを伸ばして、それが少しのびてくると、おっ!なかなかいけるんじゃない、と自分だけで思ってしまい伸ばしていたことがある。
今年の、確か5月くらいまで伸ばしていた。
「なかなかな似合うじゃあないか」と言われることがあるかと思えば、
「なんですかぁぁ〜それわ!ヤクザそのものやね。そんな髭伸ばして四国に渡らないでよ。」
K社の四国営業所の所長はそう言っていた。
いつも見慣れている顔、そこに何かひとつ今までと違ったアクセントをつけるといろんな反響を呼ぶことがあるもんだ。それが似合っているかどうかは、やはり自分だけで判断できるものではないということがそれでよくわかった。
自分ではジャン・レノ・・・のような感じだと思ってはいても、人はそれをイメージとして、「マリモオジサン」つまりまるで北海道のマリモ、と受け取ってしまうわけである。
そのギャップが悩ましいところでもある。
ワールドカップの頃はベッカム頭の若者が増えたわけであるが、誰もが似つかわしくないヘアースタイルになり、街中お坊ちゃま君のような、そういう違和感を受けた。
中にはベッカム頭のオッサンもいたが、そういうのは論外である。
自分だけの個性を出す、これは決して人の真似をすることでは出てこないわけで、やはり内面を磨くことで初めて出てくるものであろうと、そう思っている。
このところ締め切りに追われてカンズメ生活が続いた僕の顔にはまた無精ひげが・・・・気分転換にカットをすると、また少しづつアクセントがついてきた。
また少し伸ばしてみるかな、自分の気分を変えるために。
そしてまた剃った時にはまわりの人たちに「ヒゲヲキレイニソリマチタカシ・・」なんて悪いシャレを言うんだろうなと思いながら。

8月30日
午後11時を過ぎたが、オフィスはまだ明かりが灯っている。
提出前の忙しさがここにはある。
TOKO FURUUCHIのCDを聞きながら黙々と仕事をこなしている・・・。
こういうシーンを、知らない人が想像すればきっと殺気立ったオフィスを想像するのが普通だ。ただそこが他と違うところで、うちの場合はテンションが高く、まるで夜の居酒屋のように陽気にやっている。
決して飲んでいるわけではないが、どうしてもいつもそうなってしまう。
週末なのにやってらんね〜よ、おそらくそう思いながら、しかし決して口には出さずにやっているところが、いとおしく思えてくる瞬間でもあるわけだ。
考えてみれば、僕の場合設計事務所、というところに就職をしてからずっとこんな生活をしているような気がする。独立する前に勤めていた事務所は、ちょうどバブル期の頃であったせいもあるがものすごく忙しかった。
金曜日から会社に泊まりこんで、そして月曜日の朝一に提出ということがずっと続いていたのでほとんど家に帰れなかった。
緊張感と疲労とストレスで、ある朝トイレに行ったあと急に声が出なくなったことがある。声を出そうと思っても「・・・・・・・」となってしまうわけである。
所長が出社してきたので事情を話そうと思っても声がでない・・・。
「どうした?」
「・・・・・」
となるわけである。紙に「コエガデナインデスヨ」と書いて渡しても、
「またまた、小川君はうまいんだから」
まともに取り合ってくれない。
電話がかかってきてもまた紙に、「コエガデナイトイッテクレ」とかいて他の所員に渡して事情を話してもらおうとするのだが、電話の向こうから「オレと話すのがいやなのか!!なんて怒ってますけど・・・」
もうこれ以上どうしようもないな、なんて諦めて病院に行く。
受付の看護婦さんが、
「どうしました?」
「・・・・・」
「だからどうしたんですか?」
次第に年配の看護婦さんの顔に怒りの表情が滲み出してくる。
また紙に事情を書いて手渡してやっと状況を把握してもらう。
やっぱりストレスは身体に悪い、もうこんな仕事やめよう、とそのときは思ったんだけど、まだこうやって懲りずに仕事をしている。

向うの席ではカオナシ君が口をもぐもぐさせながらコンピューターに向っている。
元気である。
週末の夜、こうやって青春を過ごす若者がまだこんな時代になってもいる、ということはまだまだ捨てたもんじゃないな、ふとそう思った。

8月29日
仕事に疲れてくるとしばしドリンク剤に頼ることがある。
以前、一人でやっていたときは毎日が徹夜に近い状態だったものだから、「エスタロン・モカ」という眠気覚ましの液体をもっぱら愛用していた。
これはもうかなり昔からその筋では愛用されている薬でもある。
学生時代からあったわけだから、もう20年近く前からその名前は世間に出回っていたことになる。
当時は「麻雀」が流行っていた頃で、試験前であろうがなんであろうが劣等生の間ではそれこそ毎日やっていた。以前このダイアリーに登場したアサハラショーコー風のMもその一人であった。彼はその風貌どおり学業よりそういった仲間との付き合いを大切にしていた。
次の日の朝から劣等生どもの大の苦手とする「構造力学U」の試験を前にしながら、その日も神楽坂のジャンソーに彼は消えていった。
アルバイトをしすぎたせいもあり、眠気を抑えるためにその「エスタロン・モカ」をがぶ飲みし張り切って卓に座った。おかげで眠気は吹っ飛び、目はらんらん・・・・
やがて時は過ぎ朝になる。
大負けを喫した彼はそのまま試験場に向った。試験用紙が配られていっせいにペンが動き始める。そのサラサラサラ・・・という音に眠気を覚えた彼はそのまま机の上に頭を押し付けて眠ってしまった・・・つまり、そのドリンク剤の副作用が彼にとって一番大切な時に現れてしまったということになる。
「エスタロン・モカ」・・・・そういう遠い、そして懐かしい風景がその名前を聞くたびに蘇ってくる。

オフィスの4階にはリフレッシュルーム、というコーナーがありいろいろな自動販売機がおいてあり、一番廊下に近いところにドリンク剤ばかりのマシーンが設置してある。
今はもうないのだが、一時期「鼈(スッポン)ドリンク」という、なんとなく得体の知れない液体が置いてあった。
これは効きます!だからしょっちゅうその頃は買っていた。
扉を開けて4階に買いに行こうとすると、ちょうどいとこのT女史が入ろうとする。
「どこ行くの?」
「いや、ちょっと鼈(スッポン)買ってくるよ。」
「じゃあ、私もスッポン、一本ね」
傍らを通りかかったほかの会社の女性が怪訝な顔をして通り過ぎていった。
「スッポンかよ〜・・・・どういう会社なんだ、ここは・・・」と思ったんだろうね、きっと。
少し前の、ちょっと恥かしい記憶も蘇ってきた。

8月28日
夕食時というのは僕もそうであるが、スタッフたちにとっても一番リラックスできる時間帯である。
夕方までオフィスに閉じこもって仕事をしているわけだから、極端に言えば暗くなり夕食に出る頃初めて外に出るものもいる。
今日はフラワーロード沿いにある洋食屋の「ロイン」に行く。
オーダーした後しばし話をする。これも気分を解放するひとときでもある。
・・・・・・「神戸ワインなんかうまいじゃあないですかぁ」I平君がいう。
「ワインというのは葡萄の根が深層までまっすぐ伸びていって、そこから純度の高い地下水を取り込むことによっていい実がなるんだよ。神戸の場合はすぐに横に伸びていくような、そういう地盤状況だからいい実はならないって。それに甲州産の葡萄が大半含まれてるんで、あれはね・・・神戸という名前だけなんだ。」
「そおなんですかあああ」・・・・
そこで終わってればよかったんだけど、どういうわけか
「ところで、随分前になるんだけど、新宿の屋台のラーメン屋から腕が出てきたっていう事件あったよな〜」
「!!そういうのあったんですかぁ?!」I平はおそらく知らないだろうそういう前の頃の事件ではある。
し、しまったあああああ・・・・向かいに座っている西原君が、もう涙目になっている。
しかもオーダーしたのが五目ソバ、ときちゃあ、もう食べられないんじゃないだろうか。
「ゆびですか?左手、それとも右手かな、どっちですかぁぁぁ・・・」
頭をはたいてI平のテンションを下げるが、とき既に遅かった・・・。涙目はとまらない。

カオナシ君は平気な顔をして黙々と牛肉のバター炒めを食っている。さすがである。
オフィスの夕食風景は和やかでもある。

8月26日
週末はオフィスで仕事をしていたのだが、土曜日の朝は深江(芦屋の手前にある街だ)方面にお寿司を食べに行く。
なぜ、朝からなのか・・というと、このお気に入りの店は新鮮なものを安く提供してくれるところなので、午前中で終わってしまうからである。それに午前の遅くそこへ行くともう長く行列が出来ているので中には入れるかどうか定かではない。
そういうところから、朝・・・になったわけだ。
いかついオヤジが見た目には少しぎこちない手で握るのだが、シャリがちょうどいい按配で、ネタも新鮮で大きい。
ここはお薦めの店ではあるが、どこにあるかと聞かれれば・・・教えませんよ〜。
朝からやっているお寿司屋さん・・探してみてね。

マンションを自営しているY氏という人は建築家のA氏のクライアントであった。
ただ、風貌と言えばブルーに色とりどりの柄が入った開襟シャツ、眩しいくらいのオレンジ色のパンツをはき、靴下は緑・・・。その色彩感覚には違和感を覚えあんまりお付き合いはしたくないほうの人物ではあった。
初めて会った時はヤクザ屋さんかなんかだと思い、思わず電話に手が行ってしまったほどである。ただ気はやさしく、いろいろ声は掛けてくれた。
一度、そのY氏が大変な目にあったことをたまたま時間が空いていた僕に語ってくれた。
日曜の夜、愛人と遅くまで飲み明かし、その後深夜の寿司屋に入ったとのこと。
まあ、オッサン連中のお決まりのコースでもあるなと、そう頭の中では考えていた。そのY氏、遅くまでガラスの中に残っていた痛みの激しいネタをたまたま注文したのであろう、それから家に帰って七転八倒し、翌朝医者に駆け込んだところ、回虫が発見されたということであった。
そりゃあそうでしょう、日曜の深夜なんて御寿司食べたりしないもんね。
市場は当然休みだから、前日の朝のものを置いているわけで、ちょっと考えればわかるのに・・・。
ネタはやっぱり新鮮なうちに・・・・
そう思いつつ、今も実は仕事をしているわけで、ネタが古くなった・・いやいや、もう既に期限を過ぎようとしている提出物が書類の山の中から出てきてしまった。人のことは言えない・・か。

8月23日
「マムシに気ぃつけてね。」
暗い夜道を歩きながら、後ろからT氏がそう言った。
「え?マムシ?出るの?」
「この季節に出るマムシは噛むよ・・・・そうそう、そういう少し水があるようなとこね。」
「げげっ!う、うそでしょ〜〜」
六甲の山を越えたところにある淡河町という所へ夕方住宅の打ち合わせに行った帰りの夜道である。
T氏が後ろから懐中電灯を照らしてくれなかったら、川に落ちて、マムシの餌食・・・・。
これではちょっと洒落にならない。
今日は朝から和歌山へ打ち合わせに行き、そして夕方から六甲を越える。
自宅を横に見ながらオフィスに戻り今に至るわけだ。
締め切りは迫るがなかなか落ち着いてデスクに向うことが出来ない今日この頃でもある。
和歌山からの帰りはいつも紀ノ川サービスエリアで降りて、カンボコと称する天ぷらのようなものとお茶を買う。これがいつものパターンの昼食でもある。
海老カンボコと明太カンボコをほおばりながらホット一息・・・なかなかのものである。
神戸に向う湾岸線は海に沿って、つまり大阪湾に沿って走るので非常に気持がいいものである。
仕事が終わっての帰りだから開放感もあるしね。・・・・と、こう午後10時前のオフィスに一人残って書いているのだが、よ〜く考えてみれば、まだ夕食を摂ってなかった。
早く仕事をして帰りますか。
週末の夜はたいてい、こんなものである。

※ 昨日電話をかけてきた怪しいおっさんからは電話はなかった。
最近こういった電話が増えているらしいので、皆さんお気をつけて・・・

8月22日
「社長はんでっか?同和問題の件なんやけどぉ・・・・」
電話口の向うでいきなりこうだ。
押し売りではないと言ってる割には5万円でそういう指導書を買ってくれと、どうもそういうニュアンスらしい。
夏休みに「ミナミの帝王」を見すぎて、そういう商売もあるとはわかっていても、いきなりこういう切り口で来られると驚いてしまう。
そういう人と口論をしてもどうしようもないとは思っていても、こういうのって結構腹が立つものでもある。
弁護士さんに相談すると「よくある話だから、断っておきなさい。しつこいようだったら消費者センターに連絡をすればいいから。」こう言ってもらって少しは気分も楽になるが、やっぱり腹立っちゃいますよね、こういうのって。
「ちょっと近くまで来たもんだからご挨拶を・・・」小豆相場かなんかの営業だ。
今でこそ電話に出たスタッフに対応してもらい断ってもらってはいるが、こういう電話って実に多い。
「儲かる話なら自分でやればいいじゃない、オレ興味ないもん」「いやいや、そういう話だからこそ、是非あなただけにと思いまして。」
電話の向こうでは、きっとマニュアルかなんか見てしゃべってるんだろうなと、すぐにわかってしまうことを平気でべらべらしゃべってくる。10年以上前から話し方は一緒だ。
いきなりオフィスに入ってくるのもいるが、大体の共通点としては、入社したばかりで、スーツがまるで似合っていない。会社名を言わず名刺を先に出してくる・・・
「マーケティングの勉強はどのくらいしてたの?」「いえ・・・、やってません。」
「じゃあどうして儲かるとわかるんだ?」
「わかるんです・・・僕は」
以前このダイアリーで、卵屋さんの娘の事を書いた。
見ただけで、それが生か茹でたものかわかっちゃう、そういうのはまだかわいらしいけど、儲かるかどうか、僕にはわかる・・・・それはないでしょうよ。ね、あなた、どう思います?
この間新聞のチラシで、このカードを持っただけで不思議とお金がザクザク入ってくる、そういうものがあった。
おじさん、おばさんの体験談が添えられており、
「・・・ちょっと立ち寄った宝くじ売り場で買った宝くじが当った、このカードのおかげです」とか「・・・もう手放せない、このカードはオレだけのもの・・・」。
世の中にはこういうチラシでもだまされる人って、やっぱりいるんだな・・そう思ってしまう。

建築家のA氏と以前3流週刊誌を見ていたところ・・・どうして見ていたのかは定かではない・・・宣伝の中に、
「思いっきり、フェロモン・・・」
とか何とか言うのが出ていた。そしてお決まりの体験談が添えられている。
「今までまったくもてなかった僕が、ちょっと振りかけただけで女性が振り返る・・・・・バラ色の人生を満喫しています!」とか
「・・・・今は太陽が黄色く見える、このボトルは、もう手放せない」
新宿あたりのホストのような顔をしたおにいちゃんの写真とともに記載されていた。
A氏と、
「共同購入してみますか?」「いいですね〜」
もう引っかかってるヤツらが二人いる。
傍で聞いていた元スタッフが呆れた顔をして言った。
「そんなの振りかけて、猫とか犬とか寄ってきたらどうするんですかぁ?」
「やめときますか」「そうですね〜」
優柔不断な男ばかりだと、こういう商品も爆発的に売れる、というわけではなさそうだ。

8月19日
土曜の夜、東の空に流れ星を見た。
一瞬のことだったので願い事をするまもなく星は消えていった。
次の朝、実家の母親から電話があり叔父が亡くなったとのことを伝えられる。
小さい頃、親戚中で一番はねっかえりだった僕といつも遊んでくれていた叔父だっただけに感慨が深い。
休みはどっぷり怠惰な生活を送ったこの身体を奮い立たせて、これからお別れの前夜祭に出かけようと思う。

8月13日
オフィスの周辺も人通りが少なく、すっかりお盆休みの雰囲気である。
頭の上から照りつける太陽がいっそう眩しく感じる今日この頃でもある。
オフィスも明日から休みに入るので、今日は六甲にある「さんど亭」という焼肉屋で打ち上げをすることにした。
スッタフはとにかく食べる。
中でも特に普段から栄養が足りていない盗撮小僧Fはガツガツ食べるわけである。 狂牛病であろうが生のレバーであろうが、まだ焼けていない肉も、そういうことはおかまいなし、要は何でも口に放り込んじゃうわけだ。
「千と千尋の神隠し」に出てくるカオナシみたいなもんである。
見ているだけで気持は悪くなる。
まあ、そうやってたまには息抜きをしなければ、こういう仕事はなかなか続かないものでもある。

ただ、あの食べっぷりは・・・・・・・
だから「さんど亭」では彼だけの個室を頼むことにした。

8月12日
・・・・そういうわけでちょっと映画の見すぎの月曜日である。
今日と明日仕事をすれば、また休みに入る。
もう気持は夏休みに入ってるんだけど、朝から休み前のお仕事が電話やらFAXで入ってくる。
仕事が多いのはそりゃあ感謝しますよ、だけど、休み前なんだからもう少し・・・と考えているうちからまたFAXから書類が吐き出されてくる。
頑張りましょう!・・・またFAXが・・・
僕のデスクの近くにFAXがあるものだから、さっきから送信終了の音がピーピーと鳴り止まない。

・・・・・今度は鳥居の設計だって?お盆近くだからって洒落でこんなのを流してるんじゃないでしょうね・・・・。

8月10日
立て続けにDVDを見てしまう。
トム・クルーズ主演の「バニラスカイ」、シルベスター・スターローンの「D−トックス」「ロック・アップ」、B級映画になるのだろうか、「ロードキラー」、そして「ミナミの帝王」・・・。
時々何かに憑かれたようにそうしてしまうことがある。
ビールにジャンクフードを傍らに置き、次男と二人で・・いやソファの上で猫のココもねっころがって、いやいやそうな眼をしながら、そして時折あくびをしながらモニターを見ている、そういう状況で夜中まで見てしまった。
朝まで飲み明かす・・・そういうのも時々はあるが、僕としては映画を見て明かす、というほうがどちらかといえば好きだ。ただ、僕の場合、映画の主演男優、いやいや脇役にしてもそうなのだが、すぐにカタカナの名前は忘れてしまうところが欠点でもある。
だから映画は好きなんだけど、決して映画評論家の素質を持ち合わせていないことは自信を持って、言える。
飲んでいるときの話題としては映画はよく出てくる。
一度その場で飲んでいる全員、その名前をど忘れしてしまったことがある。こういうのは辛いものである。
その時はお酒の飲み方から始まった。
西部のサルーンで、扉を押し開けて一人のカウボーイが入ってくる・・・肉厚のグラスに酒を入れてもらってるときからイライラして、グイっとのみ干す・・・、そのときの顔がまたいいんですよね・・・「それ誰だっけ?」「ほら、あの大脱走、という映画があったでしょ?、そのときにバイクにまたがって逃げていくんだけど、結局捕まってしまう・・・あの、目がクリっとして、髪の短い人・・・」「あ〜、いたよね・・・だれだっけ?」・・・そうなってしまう。
ジーン・ハックマンもなかなか出てこない。トム・クルーズとチャーリーシーンとの区別がなかなかつかなかったし、チャールズ・ブロンソンなどは忘れないように茶色のズボン釣り、から思い出すようにしていた。
時にはタイトルから忘れてしまうこともある。
「あの、飛び上がった瞬間にカメラワークがぐりりりーーっと回るやつね、あれと一緒のシーンが・・・・、あれ、その映画なんだっけ?」とくるわけだ。
あれ?なんだっけ、その映画・・・・そうそう、マトリックスでした・・

8月9日
お盆前の週末となるとどうしてもあわただしくなる。
風邪をこじらせてしばらく休んでいた西原君が久しぶりに姿を見せた。
彼は以前ダイアリーに書いたように納豆がだめである。昼食時には納豆を食べないよう他のスタッフは彼に気を使い、それを心がけていた。
僕はといえば、ここ数日の仕事のストレスの為に昼食にはたまには納豆がいいな・・・、そのときは彼のことなど頭に微塵にもなかったわけで、自分の身体のことしか考えていなかった。
なめこと大根おろし入りの納豆・・・「これうまそうだね〜」ノウテンキにもそれをぐちゃぐちゃかき混ぜながらふと後ろを振り向いた・・・。
朝幾分青白い顔で出てきた西原君はますます青くなり涙目のまま黙々と食事をしていた。
また明日から病床に伏すのだろうかと、少し心配ではある。

8月7日
夕方になると少し風が出てきて、日中のようなカーーーッと照りつける暑さが少し和らいできたような気がする。但し建物の陰にいる場合である。
陽射しの強い場所は西日に照りつけられて陽炎が立っている。
37度を越える・・・人間の体温以上である。
少し微熱があるけれどまあ、この分ならいいか・・だけどちょっとだるいような・・・シャツには陽射しによるものとは違う体調を崩したとき特有の汗が流れてへばりついている・・・
そういうオッサンに抱きつかれたような、そういう不快な気温そして湿度でもある。
例えが長かったって?例えて言えばそんなものでしょ、あなた。

僕はスーツには絶対に長袖のシャツだ、と以前からそういうこだわりのようなものを持っていた。ただ、近頃のこの暑さに少し考え方を変えた方がよさそうだと思い直している。
昼間はまず上着を着て外は歩けない。
片手にバッグを、そして片手に上着を抱えて歩くようになる。
両手がふさがる上に、微熱のオッサンを抱きながらのものだから、また暑さを醸し出していく。
夏場になると決まって省エネだといって半袖のスーツを着込んでいる政治家親子がいるが、これは絶対にみっともないと思う。
スーツだけどズボンは半ズボン・・・これはイギリスの長い歴史の上で認められているものであり、見ようによってはお洒落な部分も確かにありそうだ。
だけど、上着が半袖じゃあね・・・。誰も真似をしようとはしないでしょ?
僕ならば街を涼しげに歩いている女性のようにノースリーブのスーツを考える。
見ように寄っちゃあベストのようで、ひょっとしたら流行るかもしれない。
腕にはちょっとお洒落にタトゥーなどを施して。
これが今年流行のノースリーブスーツだ!なんて洋服の青山あたりから出てくるかもしれない。

・・・居酒屋でノースリーブのスーツを着たオッサン連中がうだうだやっている図または混み合った電車の中でノースリーブスーツ同士が肌を触れ合わせる図・・・・・

やっぱりだめかも・・・。

8月3日
久しぶりに実家に寄る。
父親は80を超えているがますます元気で、最近はクラシックギターを近所まで習いに行っており、時々コンサートに参加もしている。
以前このダイアリーにも書いたが父親は近江八幡出身である。ヴォーリス建築事務所を退社してから久しくなるが、今は自宅でW.M.ヴォーリスの書物を整理することにも熱心である。
そこで最近出た書籍だというものを2冊ほど借り受けてくる。
今、自宅のバルコニーでビールを飲みながらその本を読み、その感想をここに書こうとしている。
「ヴォーリスの西洋館」と、「日本人を越えたニホン人・・メレル・ヴォーリス」の2冊である。
敢えて今更事細かに建築がどうのこうのと書くつもりはさらさらないのだが、その当時の建築感と現在の建築士による建築感は基本的なところで違っているような気はする。
彼の場合は日本の田舎に降り立ち、そこで英語の教師として日本という国を知ろうとするところから始まっていく。
コテコテの近江商人のこせがれに英語を教えるという行為は並大抵なものではなかったんじゃないだろうか。やってられないぜ〜・・・ってな感じだったと思う。キリスト教の信者である彼と、日本人の商人、そのギャップは大変なものだったと想像もできる。
そこをぐぐっと歯をかみ締めて、我慢しながら次第にその環境に溶けこんでいき、素晴らしい建築物を残していったメレル・ヴォーリスという建築家には今更ながら敬意を表したい。替って、現代の建築に携わってる人たちの感性は・・・まあこれは敢えて書かないようにしようっと。僕もその中の一人だしね。
ただ、その彼の感性を少しでも理解しながら、今からでも遅くはない、少しづつその感性を自分の中に取り入れていきたい、今はそう考えている。

その本の中に載っていた写真、旧ヴォーリス邸は後にヴォーリス建築事務所の所員に譲られることになる。ヴォーリスさんは自宅を建てたものの、その後に結婚して新しいスィートホームを建てたということである。当時はすごかったんだね。
その譲られた所員とは実は僕の祖父である。
その建物の全景を見て、あー、こういう家だったんだと初めてその環境、そして家の形というものを認識したわけでもある。
椅子をぶっ壊してばあさんにこっぴどく怒られている幼い頃の自分をその写真の中に見たような気がした。

8月2日
暑い日が続く。
暑いからついついうらじゅんも手を抜いてしまったのでございまして、最近は内輪の熱烈なファンであった一平も、何も言わなくなってしまった・・・。
頑張って書きましょう。

オフィスは比較的涼しい場所でもある。
ただ、外から帰ってきたときは外のまるで体が溶けてしまいそうな暑さと、オフィス内の冷気のギャップで逆に体を悪くしてしまいそうな感じでもある。そのせいかここ数日体調を崩すスタッフが増えている。
そのたびにいたって元気なT女史は、「F君は一人暮らしでろくなものを食べてないのだからジャンクフードはやめてちゃんとしたものを食べなさい!」とか「Mさんは体を冷やすとよくないんだから温かい格好をしなさい」とか、何かとスタッフに対して気を使ってくれている。
忙しくって夜中まで仕事をしているときなども電話をかけてきて、「N君は頑張りすぎるから見ておいてやってね」とか「ちゃんと栄養のあるもの食べさせるようにしてよ」「I平君は体弱いんだから、無理させないように・・・」
頑張ってくれるスタッフは会社にとっては貴重な財産である。
彼らもそれに応えてくれて頑張る、それはいいですよ、いいですけど、・・・僕はどうなってるの?あの〜、僕も電話に出るということは彼らと一緒に頑張ってるんだけどなぁ・・・
「じゃあ、みんなのこと頼むわよ!ガチャ・・・」である。
一応僕も頑張ってるんですけど・・・。

夏風邪で体調を崩した西原君は今年一級建築士の試験を受けた。
まずは1次試験を通るように、願掛けの意味でボードに彼の笑顔が収まってる写真を貼り付けて壁に掛けておいたのだが、そのボードが大きな音とともに下に落ちてしまった。

そのことを誰も彼には言ってはいない。

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