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2月28日 高校生の次男は今テスト中である。 「試験にカツ、という意味で今日はカツを食べたい。」 俗っぽいジンクスをどこで聞いてきたのか、彼はそう言った。 その夜、腹いっぱいカツを食べたおかげで夜中に下痢をし、テスト勉強は打ち切られてしまった。(土曜特別版) 2月27日 よほどのことがない限り、歯医者に行くことはないのが僕のポリシーである。 ただ歯医者へ行くのが怖いに過ぎないということである。 少し前から気になっていた部分が疲れると痛み出し、また痛みが和らぐといった周期が訪れており、その周期が次第に短くなってきていたのでついに歯医者へ行く決断をした。 いつも行くクリニックは阪急六甲駅の南側にある。 昔からお世話になっており、僕が人一倍痛みに対して敏感であることも先生は熟知しているので、たいてい治療を始める前に麻酔を打ってもらうことにしている。 その方が僕が暴れたり泣き出さないので先生としても楽だからなのである。 ここは普通の注射による麻酔、つまり最初チクッときてそのあとグググッとくるようなものではない。 水鉄砲のような形状をした機材の先に針金状の細い針が付いており、歯茎の際に押し当てて引き金を引いていく・・・しばらくすると治療部分が痺れてくる、そういう優れものの機材を使って治療をしてもらえるのでまだ救われている。 それでも反射的に痛みを覚えたような気がして思わず手を上げてしまう場合がある。 本当にこういう場所では僕は子供のようになってしまう。 中学の友人で、大阪で歯科医院を経営しているT君がいる。 同級生の何人かもそこでお世話になっており、なかなかの名医だということも聞いている。 彼とは最近になってたまに一緒に食事をしたり飲んだりすることがあるのだが、そういうときにいろいろと治療についての話しを聞くことがある。 電動歯ブラシはこのメーカーのものがよいとか、歯の磨き方、なぜ歯軋りをするか等々、酒の上でもそういう話題でけっこう盛り上がってしまうこともある。 「痛いときは言ってくださいね、と言われるけど口がああいう状態だったら言えないじゃない。 僕の場合は手を上げたり、膝をたたく、痛さの状況を指の数で表現したりしてるんだけど普通はどうなの?」 「普通は手を上げさせるよ。」 「じゃあ患者が手を上げたら一応手を止めたりして様子を見るんだ?」 「普通は患者が手を上げたら、その手を押さえつけるようにして力尽くで治療するな、うん。」 表情を変えずにT先生はそう言った。 2月26日 I平が退院し、久しぶりにオフィスに顔を出した。 まだ少し顔色は悪いが元気そうではある。 内科から持ち出してきたレントゲン写真を窓に貼り付けて、どの部分が問題だったかを説明してくれる。 病院の生活がいかに過酷だったかということなどもケーキを食べながら話をしていた。 「じゃあ、しばらくは様子をみながらということで。」 「ハイ、では明日からまた頑張ります!」 「煙草はどうする?持って帰るか?」 「よしてくださいよ、今は吸う気力ないですから・・・・」 彼のバッグの中には禁煙用のガム、キャンディー、フリスク等々がぎっしり詰まっていた。 2月25日 オフィスを出たすぐのところに昔ながらの古い映画館がある。 「三宮アサヒシネマ」である。 僕が中学生の頃には、道路を南に渡ったところにもうひとつ「BIG映劇」があり、映画を見るのには不自由はしなかった。 BIG、の方はすでにカットハウスにいつの間にか変身してしまってはいるが、この「アサヒシネマ」はいまだに健在である。 映画の上映といっても、話題になるような映画の封切館ではなく、どちらかといえば佳作、な映画を上映している。 オフィスの目と鼻の先にあるのに、こちらに引っ越してきてからは一度も入ったことがない。近くにあるとなおさらそうなのかもしれないのだろうが、入ってみたい、そういう気持ちにいつも駆られている。 最近は時間に追われているせいか、こういう空間へ逃げ込みたくて仕方がないときがある。 映画館か、もしくは生田新道沿いにある「神戸サウナ」、昼間こっそりと抜け出して行きたい場所ベスト2である。 この書類をFAXした後に行ってやる、と思いつつFAXをしている最中に電話が入る。 その対応をしている最中にまた向こうで電話が入ってるよ、と合図が・・・ すべて処理したときはもう夕食の時間になっている、というわけだ。 映画はこれから行ってももう最終には間に合わないだろうし、サウナは会社帰りのオッサンで埋め尽くされている、と考えるといく気が失せてくる。 それが1週間続いて週末になり、そしてまた週明け忙しくなってくる。 「明日の朝10時までにFAX」という書類をやっと片付け、明日こそは、と午後11時過ぎのオフィスで一人そう考えている。 2月24日 「おっと、電話だ、もういいっすかね。」 相手からFAXが送られてきたので、すぐにこちらから電話を相手先に入れる。これが仕事をする上での礼儀だとも思っている。 こちらから電話をかけたばかりで、これから質疑をかけようとしたところが、その言葉だ。 こちらの電話よりももっと重要な件での電話が入った結果としての言葉だ。 それは判るよ、判るけれど、もう少しばかり言いようがあるんじゃないのかなと、そう思うわけですよ、わたくしは。 しかも相手は僕よりもうんと年齢は下の人間である。 普通ならば、「すいません、ちょっとこちらから一度掛け直していいですか?」などと、いくら仕事を発注している先の人間であっても礼儀としてはそういう風に言うであろう。 こういうところから信頼関係はいっきに崩れてしまうものだ。 得意先の営業なのであえて我慢はしたが、これには久しぶりに腹が立った。 長く仕事をしているといろんな人間とかかわることになる。 最近はいくら初対面であっても少し話をすればその人の性格、感じなどは掴めてしまうようにもなった。経験を積み重ねてきた人なのか、上辺だけなのか、そういうところはすぐに判ってしまう。 だから先述した営業マンはまだ経験が浅いというのも判っているからこそ、そういう風な言葉に腹を立てるほうがおかしいんじゃない?とそう思う人もいるかもしれない。 だけど、こういう言葉などはその人の持っている人となりだと思うわけです。 礼儀正しく育ってきたならば決してそういう言葉は決して出ないと、そう僕は思っている。 年齢差、経験差などよりも自分が属している組織の規模だけで上か下かを判断してしまうような人間は世の中に掃いて捨てるほどいるわけだが、少なくとも自分の周りに今までそういう人間がいなかっただけに、今日は本当に腹が立っている。 え〜い、掃いて捨ててやりたい・・・・・。 2月23日 「やっぱり麻酔が切れると、痛かったですぅ〜〜」 週末に手術をし、麻酔が切れるまで約1日かかり、週明けにやっと電話のできる状態になった、I平から電話が入った。 「安心したよ、よかったな。じゃあいつ来てもいいようにデスクの上には煙草を置いておくから」 「もうしばらくは煙草は吸いませんよ〜〜」 当たり前だ、今度煙草吸ってて入院したらほっぽり出してやる、もう見舞いにも行かないもんね〜〜・・・と心の中で思ったが、言わなかった。 オフィスに出てきたら言ってやろうと思っている。 「手術の結果なんですけどね・・」I平の母親からすぐに電話が入った。 「たった今彼から電話が入って、経過を聞かせてもらいました。よかったですね。」 「今度煙草吸って入院したら家から追い出すからって言ってやりましたよ。」 上手がいた。 2月22日 日曜のテレビは、夕方からの定番として「笑点」「サザエさん」などがある。 こういうのは通常日曜のお茶の間のBGMとしてたいていはつけていることが多い。 それに続く番組なんかもそのときの気分によって変えながらも寝るまでつけっぱなしにしておくことが多い。 「住宅のワースト10・・・」という番組をやっているのでついつい見てしまった。 監理者及び工務店或いはゼネコンに非があるような「作品」をクローズアップして見せている。 家を新築する場合に注意をしなければいけないような場面を取り入れている点では一般的なお笑い番組よりは「実がある」ものだとは思う。 その中でのワースト1に輝いたのが、老人をターゲットにした、あまり意味のないリフォームをさせるような、押し売りのリフォーム屋、であった。 老人の一人暮らしを狙い、いろんな補強金物を家にべたべたと取り付けては高いお金を請求する連中のことである。いかにもと思わせるような体型と服装をした元リフォーム屋が出てきて、老人がいるかどうかの見分け方等を披露する。 もちろん顔にはモザイクが入っている。 ふーむ、なるほどこういう手があったのか、と変な意味で感心しているうちにその番組は終わり、いつのまにか所さんの「ビフォー・アフター」が始まっていた。 この番組は建築に携わっている人ならば欠かさず見ている、というように思われているのだが、僕自身あんまり見たことはない。 ことのついでに見ていたのだが、ご主人を亡くし一人で大きな家に住んでいるの女性のために「空間の探検家」なる建築士が登場してきて素晴らしいリフォームをしましょう、荒く書けばそういうストーリーだった。 建築士自身が時間を割いて住人のために心憎いほどの気を利かせたものを創り上げる、確かにそれはそれでとても良いことだとは思うわけだ。ただ、現実として考えるなら、企業としてやっているならばそればかりでは無理だなと感じるところがある。 個人的にオフィスを持っており、仕事とお金に余裕があり、人のためにひと肌もふた肌も脱いでやろうじゃないか!なんて人しか通用しない世界のものだと思ってしまった。 まあ、宣伝効果は確かにあるので出演後の仕事には期待できるではあろうが、テレビでの演出の中での世界と現実とはちょっと隔たりがあるような、そういう違和感はある。 ところでそれよりも、一人暮らしの老人を狙うリフォーム屋などが横行してるっていうのに、その後でここでこういう素晴らしい空間に一人で生活をしている人がおりますよ、なんて、おいおいそんなこと披露してしまって大丈夫なの? 上手にリフォームできました・・ その後、ゾロゾロリフォーム屋がやってくること、間違いない! 長井秀和口調になっちまったぃ・・。 番組自体の構成はまだいいにしても流れがよくない。 あまりにも絶妙のタイミングだとも思えてしまう 日曜のテレビについてあれこれ、でした。 ※ 「これ、今ネット上で取引されててね、7000円くらいになってるんだって」 「無いからそんな値段がつくんであって、そこまでして食べるほどのもんでも・・んぐ、んぐ・・よく味わっておかないと・・・・」 CO−OPの通販で買った吉野屋の牛丼の冷凍パックを次男と一緒に食べた。 この時期に食べるのは少しばかりの優越感がある。 日曜の昼下がり・・・でした。 2月20日 今日は入院中のI平の手術の日である。 ほんの数時間の手術だから大丈夫です、と彼は言っていたのだが、やはり気にはなる。 かといってこちらから病院に置いてある彼の携帯に電話をするわけにもいかないし・・ 月曜まで待ってみることに決めた。 徳島の実家に帰らせているカオナシ君から電話が入る。 彼の話を聞いている限りではまだ復帰は先のような気がする。 「まさか飲んでるんじゃないだろうな」 「ま、まさか・・・」 しばらくは様子見である。 ことほど左様に体を悪くするのは、何も仕事だけが原因だとは限らないと考えている。 僕も彼らと同様、いやそれ以上に日常的にストレスを受けてはいるのだが、比較的元気である。 目が充血して眼科で悲惨な格好になった程度で、寝込んだこともない。 彼らとの違いは基礎体力にあるのだと思うが、基礎になるものは食べ物に原因している、とT女史は分析している。 今の時代はすべてに防腐剤なんかが入っており、コンビニ等々で3食そればかり食べているから体が悪くなる、昔はそういう便利なものはなく自分で作って食べていた、そのあたりが今のひ弱な坊やたちを作り出しているのよ、と力説しているわけだ。 確かにそう思うが、自分に置き換えてみると、僕が彼らの年代の頃はカップ麺などもなかなか食べられないほどに食生活は悪かった記憶がある。バイトで入ったお金などもその日のうちに他の貧乏人どもの餌食になることもあったし、逆の場合もあったからだ。 それを考えると彼らは恵まれすぎているからこそ抵抗力がなくなってきているのかもしれない。 「今日からこれとこれね」 デスクの上には、「SUPREME STRESS B」と「ANABOLIC」という錠剤が置かれた。 BはビタミンBの総合剤でありANAは亜鉛だということである。 T女史の頭の中では、次の番は僕、だと考えているようだ。 2月19日 プロと呼ばれる人ほどそうなのであろうが、仕事をしているときの動き、それに「間」というものはやはり素人のそれとは格段に違うものだと感じる。 いい例が、北野町でバーを経営なさっているS氏などがそうだと、僕はいつも思っている。 一歩お店に入ったその瞬間から彼の僕に対する動きが決定される。 カウンターに着くタイミング、さてと、何にしようかなと考える間の彼の動きにその「間」というものが実にぴったりと僕に合わされてくるというわけだ。 カウンターに座って一息ついて、さてと・・と思ったときには彼はこちらを向いて、 「どうしましょ」 このタイミングが実に、いい。それに声もいい。 だてにそういうところへ飲みに行っているわけではあるんだけど、いや、行っているわけじゃあありませんが、ですね・・・ちょっとうろたえてしまった。 そういう動きを見ていると、これを自分の仕事にも反映しなくっちゃという学習能力が高まってくるわけですよ、ええ。 いくら電話がかかってこようと、たとえそれが大至急の督促であったとしても、それに合わせて僕は動きと、「間」を持ちながら冷静に動いている、と自分では思っている。 「何時頃になりそうです?相手には午後6時頃までに、と言ってるんですがね〜」 「了解シマシタ。タダチニ」 電話では志賀さん口調になってるんだけど、 「Y田君、5時までだからな、ぬかるんじゃね〜ぞ!」 電話を切るとやくざのオッサンになっている。 それもこれもカウンターの内と外、そういうギャップはあると、思う。 2月18日 「で、これからどうするの?」 「これからゲンチャ、で長田まで行って練習をして、朝になったら仕事に行きます。」 長男が帰国している間に、その仲間連中が自宅にやってきたときのこと。 夜遅くギターを抱えてやってきて、少し食べた後でまた出て行こうとするM君にそう聞いた。 ギターでプロを目指している彼は、中学時代のときでさえ家でその素晴らしいプレイを披露してくれていたのだが、ますます腕には磨きがかかっていた。 「上手な連中はいっぱいいるから頑張って練習してよね。」なんて、意味不明の言葉をそのとき彼にかけた記憶がある。 で、いっぱい頑張って練習をした彼はCDを出した。 8曲構成で全曲ギター・デュオのインストゥルメンタルだ。 この日曜日もタワーレコードでライブ+サイン会があるらしいので顔を出してみようと思っている。 「聴かせてもらったよ、なかなかいいじゃん。」 「ありがとうございます。どうも、です」 「素人ながらまたいろいろと批評させてもらうからね。」 「ハイ、何でもいってください!」 メジャーになる前だけだと思う、こういうことが言えるのはね。 「ん?あ〜、あの当時はいろいろ言われましたよね〜は、は、は・・」 あと数年すれば彼のそういう余裕のある言葉が返ってくるような気がした。 ま、なにはともあれ頑張って「ゴンチチ」を追い越しちゃってね、たくちゃん。 応援してます。 2月17日 「注文がまだ出てないってよ」 「今やってるって言っといてよ〜!」 まるで蕎麦屋の出前のような状態、或いは美味いラーメン屋のオヤジのごとく次から次へと入ってくる電話の対応に追われている。 I平のお見舞いでスタッフも出払い、T女史はコンタクトをまた落としたと言ってうろうろしている中、電話もとらなきゃあいけないし、図面も探さないと対応できない・・・。昼間はそういう状態だった。 で、やっと落ち着いたのは外が暗くなってからだった。 誰もいないときに限って電話がじゃんじゃん鳴る、そういうのってよくあることだと承知はしていたものの、さすがにこういうのは疲れます。 「朝、FAXで送っておいた件なんですが・・まだです?」 「今やってるところなんで、あと10分くらいで送りますよ。」 で、電話を置いてその仕事を片付けようとすると別の電話。 「例の件ですけどね、やっぱり相手が承知してくれなくってね〜。もう一度別の案、出してもらえませんかね〜」 「了解、できるだけ早く片付けますよ。」 「あとね〜〜〜」 その場で電話をたたききって、デスクに向かう。 「昨日のFAXみてもらってますかぁ?」 また別の電話だ・・・ 「ハイ、見たんですが」 そういえばそういうのが来てたなと、手元に山積みされた書類から引っこ抜く・・ 「これはこうして、こうやって、いいですね、では」 で、またさっきの電話が入り、 「朝の件なんですが、10分過ぎましたけど〜〜」 鉄分とビタミンB12が体内から抜け出ていくように思えた。 2月16日 体中チューブでがんじがらめにされているI平のお見舞いに、神戸中央市民病院へ行った。 平常時でもあまり食事を摂らない方のI平だから、病院ではほとんど食欲がないらしく、少し痩せたように感じた。 途中で僕は「なごみ茶」を、T女史は「力水」を持って病室へ入っていった。 彼を励ますためにというわけではなかったのだが、なぜかそういう飲み物を手に携えて行ったわけだ。 やせ細った病人のそばに、髭の男と声のでかい女。 傍から見ればまるで児童虐待を受けている児童とその両親、そういうイメージであったに違いないと思う。 しばらくは仕事のことを忘れてゆっくりさせてあげたいと考えている。 2月14日 「全身をがんじがらめにされて、体にチューブを通されています。 来週の金曜日手術します。看護婦さんの目を盗んでまたメールします。」 神戸中央市民病院からI平がそういうメールを送ってきた。 「せめて手術のときだけは煙草吸わないように。」 僕は愛情を込めてそうメールを返した。 2月13日 週末になると電話や新たな計画が集中し、なかなか自分の思ったとおり仕事がはかどらない。 イライラが募ることもある。そういう時は外の空気を吸って気分転換を図るに限る。 いつまでたっても午後12時50分を指したままの腕時計の電池交換をするために、近くの「ウォッチマン」へ行く。 週末の三宮センター街は相変わらず人が多い。 最近あまりそういう人の多い場所へ出なかったせいか、人の流れになぜか馴染めない。 流れが速くてついていけない、というわけではなく馴染めないのはなんとなく柄の悪そうな若いヤツ、が多いせいだとわかった。 真っすぐ前を向いて歩かないのだ。 ふらふら歩くわけで、しかも片手に煙草を挟みながらだからよけながら進まざるを得なくなる。高校生は上着の下からシャツをだらしなく出して、ズボンを下ろしてよたよた歩いている。前から来るヤツなどは平気でぶつかってくる・・。 ニューヨークのクイーンズ地区のストリートでよたっていそうな黒人とイメージがダブってしまった。まだあちらのほうが格好はいいけどね。 とにかくいつの間にか雰囲気の変わってしまった街の流れに愕然としながらオフィスに戻ってきた。 デスクの前に座ると目の前にチョコレートが置いてあった。 思いやりという気持ちが僕の周りには残っている、と考えると少しばかりホッとした。 2月12日 目の回りの充血がやっと回復した。 その途端にI平の入院が決まった。 Y田君のように「睾丸の炎症」ではなく、肺の「気胸」という症状でだ。 実はカオナシ君も慢性疲労症候群のため現在自宅療養をさせている。 往年の選手層の薄い阪神タイガースのように、レギュラーメンバーの故障続きでろくにオーダーが組めないような状況になってきたような気がする。 だがまだ二人いる。 だからといってボロ雑巾になるまでこき使うつもりはさらさらないが、なんとか今の状態で現状を乗り切っていかなければならない。 I平を市民病院へ送っていく車中、 「1週間くらいで出てきますよ。」 「しっかりオツトメしてきてくれよな。後のことは俺たちに任せてさ。」 弱小暴力団内で、親分以外全員鉄砲玉ばかりという状況で、鉄砲玉の一人にオツトメが決まり、次第にその数が減っていく、という方がこの際ぴったりのような気がする。 2月11日 オフィスの近くに大規模な古書の店がある。 書籍だけではなく昔なつかしの映画のパンフレットや、レコードのシングル版、その他オタクが小躍りして喜びそうな「鉄道マニア」なんていうものまである。 建築の専門書も少ないがあることはある。 最初この店を訪れたときは、あまりの値段の安さに両手にいっぱい本を抱えてレジに行ってしまった。 ジャンルでゾーンが分かれており、エスカレーターを降り、左手の方向には漫画(コミックス)が棚にぎっしり詰まって、かなりの面積を占めている。 ときどきこのゾーンを訪れることがあり、今日は遅いランチの前に少し立ち寄った。 ここへ来るとどうも眩暈(めまい)がするような、ちょっと疲れているのかな、少し身体が重くなったような、そういう他の空間とは少しばかり違った感覚がここにはある。 T女史が最初にこの店に足を踏み入れたときは、 「あ、ここ私ダメ!」と思わず小走りに店外へ去っていった経緯がある。 古い書籍にはその持ち主のいろいろな念が込められており、それが唸りのようにこの店中に渦巻いている、というのだ。 そういう独特の感が彼女にはあるのだが、僕には、ない。 コミック小僧どもが立ち読みをしており、その体臭等々が混ざり合って特殊な空気を醸し出している、最初はそう思った。 しかし二度目に訪れたときに理解した。 本の重さがあまりに大きいので床がたわんでいる、ということに気がついたのだ。 しかも振動もしている。 もともとは違う用途で使っていたのであろうと思われるこの空間に、ぎっしりと本が積み上げられていることがその原因だということが、その方面を専門職としている僕にはわかってしまった。 更に専門用語で言えば、積載荷重が大きいということになる。 もう少し、この「ミナミの帝王 46巻」を読んでいたいのだが。床がしなってきている。 後ろを小太りな青年が通り過ぎただけで振動が起こっている・・・。 休日の午後、オフィスで仕事をしていたついでに立ち寄った古書店で床が崩壊。 オタクどもに混ざって瓦礫の下敷きに・・・ そうはなりたくなかったので足早に店を出た。 そういうことはないだろうが、不安を覚える場所には近づかないほうがいい、と思う。 それを考えれば、今仕事をしているこのデスクの前、督促の電話が入らないかといつも不安を覚えながらやっているわけだ・・今日は早く帰ることにしよう。 2月10日 吉野家の牛丼が食べられるのは今日までだ!と各店舗にはいっせいに人が並び始めたそうであって、実際に近くの商店街にある、オレンジ色の看板の「よしぎゅう」も人が並んでいた。 だけど、明日になるとまた同じように牛丼が同じ値段で食べられるとしたら、とっても素敵な企業戦略だと思うわけだ。 実際はそんなことしたら大騒ぎになるであろうが、そういうところに便乗してひょっとして試してみるようなオレンジ色の看板の「吉田屋」があるかもしれない。 近くには売りつくしセールを去年からずっと今もやっている店もある。 品数が次第に少なくなっていくのかな、と思ってそこを通る時にのぞいて行くのだがいつも店員さんが仕入れをしている。 企業である限り、どんな場合でも常に効率化を考え少しでも利益を上げていく、そのためにはどうすればいいのかということを考えるようにしていかなければならないと、スタッフにはそう言い続けている。 自分たちのすべてを売っていくという気持ちがなければ仕事は持続しないし、相手の心理を読むことで気持ちを少しばかりくすぐるような、そういう気の利いたアイディアを提供していかなければ仕事はできないと、僕はそう思っている。 「しっかり勉強しなくっちゃねぇ〜、Y田君。」 「ハイ、スポンジが水を吸収するように頑張ります」 「狂牛病のように脳がスポンジ状にはならないようにね」 「マジッスカァ〜〜」 まだまだ売れるには時間がかかりそうだ。 2月8日 「QUEEN」のビデオを立て続けに2本見てからモモの散歩をし、夕方に吉川にある「よかたん温泉」に行く。 自宅から車で40分ほどの距離なので、最近は毎週のように行っている。 滝のように湯が岩の上から流れ落ちてくる露天風呂が僕のお気に入りなのだが、今日はちょっとした邪魔が入った。 熊だ。 いや、実は熊の様な毛並みをしたオッサン、なのだが、やにわにその滝の下で修行を始めた。 体毛に当たった湯しぶきが角度が悪かったのか、すべて僕の方へ向かって飛んでくる。 せっかく鳥の声に気持ちが晴れ晴れとしていたのに、熊に邪魔されてしまった。 「QUEEN」の素晴らしいヴォーカルだった、フレディー・マーキュリーはエイズのためにこの世を去った。 初期の頃は、ちょっと派手目な顔をした、声のいい男であったのだが、熟成期になると、体全体からゲイ、を醸し出してきているのがビデオから読み取れた。 素晴らしい声の持ち主であり、QUEENというメジャーなグループに属している男だからこそ、これはこれでいいのであったんだろうが、普段こういうオッサンが道を歩いていればちょっと引いてしまうだろうと思う。 熊男の胸毛からふと、フレディー・マーキュリーの胸毛を思い出した。 そこから「バイシクル・レース」が頭の中に流れ出し、湯煙に垣間見える夕暮れの空にその曲が広がっていった。 2月7日 大義名分だけに重点を置いて、その後どういう風にしていくか、つまり今後のスケジュールを具体的に絶対明らかにしないのが今の政治であり、大義名分が自衛隊派遣、ということになる。 何も評論家のようなコメントを書こうと思っているわけではないし、そういう能力は僕には、ない。 そういう素人同然の僕のようなものにわかるような行動を政治家としてとってもらいたいということ、言葉のまやかしですべてをうやむやにし、最後は責任を取ることもできないようなことはしないでほしいとそう思ってるわけですよ。 でも現実にはそれができないわけだから腹立たしさが募る毎日、なのである。 「いつ頃までにFAX送っていただけますか?」 「え〜〜っと、そうですね・・・夕方ごろ、いや夕方の遅くに・・・」とか、 「明日のあさいちには・・・・」 そういう督促に対しては、できるだけ明確にしないような回答をする場合がある。 確かに人のことは言えないですよ、え〜言えませんとも。 でも、ちゃ〜〜んと僕は自分で責任取ってるもんね。 2月6日 深夜に「ブルース・ブラザーズ2000」のDVDを見た。 子供たちからのバースデイプレゼントだったのだが、一人で見た。 ジョン・ベルーシも死んじゃっていないわけだし、その頃の単なるリメイク版なのかなと思いつつ見ていたのだが、いや〜、これにはまいっちゃったね。よかった、うん。 内容としては、前回同様警察やマフィアなんかに追いかけられながらもバンドをやってお金を稼いじゃう、ってところなのだが、その中に出てくる「ルイジアナ・ゲイター・ボーイズ」のメンバーとして、B・Bキングや、エリック・クラプトン、それにグローバー・ワシントンJr、なんて人も出てくるわけです。 その対抗馬としてブルース・ブラザーズが出てくるわけだが、決して見劣りしない上に、サングラスをかけた子供のブルース・ハープがすばらしい・・ まあ、興味がない人にとっては何を言ってるんだかわからないだろうけれど、知っている人がこれを見れば虜になってしまうような、すばらしい作品に仕上がっていた、というわけです。 おかげで今日はちょいと寝不足で、目のほうはまだ赤い。 2月5日 午前中大阪で打ち合わせを行い、吹雪の中オフィスに戻り、そしてまた外出。 現在午後7時で、たまっていた電話もすべて終わりやっと一息ついたところである。 うらじゅんを書くためだけにデスクのライトを点け、そしてこれを書き終わったら今日はすべてのノルマを放棄して自宅へ帰るつもりである。 日付が変わるまでにケーキの上に乗っているキャンドルの灯を消さないといけないのでね。 2月4日 「小川さん、どうぞ〜」 「はい・・」 コートを脱ぎながら椅子を立ち上がろうとした瞬間にズボンのファスナーが開ききっていることに気がついた。 ヤバイ! ファスナーを上げようと試みるが、一緒に手に持っていたマフラーがそこに絡みつく・・・ 「どうなされました?」 「いえ、ちょっと・・・」 中腰になり、慌てふためきながら前をモゾモゾしているオッサンを見れば、そりゃあ誰だって不審に思うだろうな。 朝、鏡を見て、右目の半分が充血していることに気がつき血の気が去っていくのを感じた。 さっそく一番で眼科に飛び込んだ。待合室でしばらく待った後、受付の女性に呼ばれて立ち上がった途端にそういう状況になってしまったというわけである。 目の充血した、髭をたくわえたオッサンが、中腰になりながら前のほうに手をやってモゾモゾしている図。 自分で考えても不気味ではある。 幸い問題はなく、しばらくすれば治るとのことで安心したのだが、こういうことはそのモゾモゾを含めて初めてのことだったので別の意味で落ち込んでしまった。 明日またひとつ歳を重ねる。 |