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9月30日
・・・・とは言っても、もういつの間にか時計は10月1日を示している。
時間が経つのがとても早く感じる。
昨日の台風もオフィスで仕事をしている間に駆け足で去っていった。
時間の流れが早く感じるということは、それ自体とても充実していることだと自分では思っているのだが、振り返ってみれば、特に月末は仕事が立て込み、督促の電話に終始することの方が多いような気がする。
プレッシャーに耐え抜き、削られていく睡眠時間をいかに確保するかを考えながらデスクにかじりついて仕事をするのは10年前も同じだった。
逆に考えれば年期が入っているわけで、その辺のオッサンには負けない強い精神力を持ち合わせているという自負はある。

9月一杯の予定が、10月の1週目までに延びた仕事を思い出した。
まだ少し時間があったので他の仕事を先に片付けるようスケジュールをたて、さっきやっとひとつ片付けたところであるが、ちょっと気になる点がひとつある。

10月の1週目って、明日の金曜日だけ?

9月28日
カウンターの向こうから一冊のフォルダーをS氏はそっと差し出した。
その中には彼が今まで手がけてきた名刺やその他のデザインの数々が並べられていた。
名刺という従来のイメージよりも、むしろポストカードといった方が良いような斬新なデザインがその中に散りばめられていた。
「やっぱり不特定少数の人間がいるようなオフィスの名刺は無理か・・・」
内心そう思いながらもそのデザインに引き込まれていった。
もうこうなると心は子供になってしまう。
「こういうのじゃないと、やだ・・・。こういうの見ちゃうと、もう他のはね・・・」
ショーウィンドウの中に飾られてある一際目立つおもちゃに見せられた子供のような気持ちになってしまった。
さて、と。ここからが大人の交渉である。
気持ちを悟られないようにしながら・・・
「まあ、今日僕が来たのは是非創ってもらいたいというわけじゃあなくって、まずは今こういう状況だということを認識してもらいたいのですよ・・」
説明にも何にもなっていない。
「いいですよ」
「え?・・・え〜っと、あの〜名刺・・・いいんですぅ?」
「小川さんのイメージをもう少し整理して後日連絡させてもらいますよ」
心を見透かされていたようだ。

で、連絡が入ったのは週が明けてすぐだった。
「ぴったりのイメージが浮かびましたので」
電話の向こうからいつもの低い声が耳に響いた。

オフィスまで持ってきてもらった名刺のデザインは素晴らしいものだった。
デザインもさることながら、細やかな気配りされた箇所がその中に散りばめられているところに、人とのつながりをとても大切にされているS氏の気持ちを強く感じた。
写真に出来上がりを載せたのだが、そういう部分は僕のような素人ではとても表現できないところが残念ではある。

10年目に再び初心に戻り、新たな気持ちで仕事をしていこうと、今デスクの上に置かれた名刺を見ながらそう考えている。
志賀さん、ありがとうございました。

オフィスの扉を開けわけのわからない営業が飛び込んでくる。
「ともかく名刺もらえますか?」
はいよ〜、なんて差し出せるしろもんじゃあねえんだよ、これは・・・出なおしてきな!
って撥ね付けるだけの威力は、この名刺にはある。

9月27日
長年慣れ親しんだユニフォームを一新する、例えば阪神タイガースの縦縞をこの際横シマにし、黒と黄色を入れ替えてみる。
これはこれでファン、な方は「おお!!」と思う・・・と、思う。
オフィスを法人化したのが阪神大震災の年、つまり今年で10年目を迎えるわけだ。
新しい服に着替えるつもりで名刺を一新した。
「なにも、あなたね〜、こういう時代なわけだから、名刺くらいでそんなおおげさな・・アハハ・・、ね」
そう思う方もおられるかもしれない。
僕は自分で仕事を始めたときから一番大事にしてきたのが、その名刺だった。
大学時代の友人で「こだわりのS」と称される男にそれを頼んだ。
「これはちょっと真面目な形で、こっちは業界風で・・・」いろいろと考えてくれた。
線の色、位置や文字の大きさなど細かいところまで彼はこだわってくれた。

それから10年経った。
「あのね〜、こんなに薄っぺらい紙使って、字は消えそうなまでにうすい・・こんなのよく作ってくるわよね〜、やり直し!」
ガシャッと受話器を切ったT女史の怒りの目を見たのが約3ヶ月前。それからいつまで経ってもいっこうにその事務屋さんからは連絡がない。
一番最初に頼んだところがそこであり、当時はとても熱心に作ってくれたのだが、10年の変遷ですっかり落ちぶれてしまった気がした。
どうしようかと彼女と相談した結果、
「Sさんに頼んでみればどうかな?」
ふとT女史がそう言った。
S氏とは、「CAFE BREAK」でリンクをさせていただいている加納町のバー店主である。
「たしかにSさんは昼間はデザイナーだけど、誰にでも創ってくれるって〜もんじゃないからね・・・」
確かに目の付けどころはいいとは思ったが、どう頼んだものかなというのが最初の印象だった。
僕やT女史はS氏とある程度は話が出来る仲、だとは思うのだが、スタッフ全員となると・・
「お顔が見えない人まで作るのは・・ちょっと・・・・」例の低い声で、グラスを拭きながらそう言われるんじゃあないか、それが心配だった。

「実は、名刺なんですけどね・・・」
そこまでの経緯をS氏に説明をし、カウンターの向こうにいる彼の返事を待った。

9月25日
アコースティックギターの手入れをし、「トゥ−ビ−・ウィズ・ユ−」(Mr.BIG)の間奏をある程度練習してから新開地にあるライブスタジオに出かけた。
ギタープロのシラッキー氏のレッスンが今日から始まる。

「ちょっと様子を見たいから好きな曲を弾いてみてくれる?」
弾こうとしてふと気がついた。
昨日練習した「トゥ−ビ−・ウィズ・ユ−」はヴォーカルがなければ間奏までは単なるストロークだけなので、目の前にいるシラッキー氏に対してはさっぱりアピール性をもたないものだ、ということに気がついたのだ。
彼がこちらを見つめている。
仕方がない・・・と口を開こうとしたが、歌詞が浮かんでこない。だって今までは何気なく聞いていた曲であって歌詞までは覚えていないもんね。
覚えていたとして、歌おうとしたところでプロのシラッキー氏に一笑にふせられていたに違いない・・・
「ギターに触れるのは久しぶりなので、即興ではちょっと・・」
「じゃあ、基礎から始めるか。」
「ハイ、先生」

何事もまずは白紙の状態から素直に取り入れていったほうが上達は早い、いつもそう思っている。(見栄はって恥じかかなくてよかった〜〜。)
テーブルの上にビールのグラスを置き、それを飲みながらレッスンを受ける・・もう環境は最高である。
今日はブルースの展開コードを教わり、僕がコードを担当し、シラッキー氏がアドリブでいろんなフレーズを弾いていくというスタイルでレッスンは進んでいく。
ジャズの曲を人の前で披露するまでにはまだ道は長そうだ。

9月23日
いつも通りの時間に起きて、8時からの「トクだね!」を見ながら支度をする、といっても祝日にこの時間からオフィスに出るというわけではない。
「バイオハザードU」を朝早くから映画館で見ようと思い、朝の儀式のいくつかをすっ飛ばして支度をしている、ということである。
いくら祝日とはいえ、こんなに早くから六甲アイランドの映画館が超満員ということはよもやないだろう。
予想通りで、「i−ROBOT」は行列が出来てはいたが、バイオはすんなりと入場できた上にほとんど人がいない状態だった。
最初話題で人は入るが、しばらくすればガラガラというのが最近の映画の傾向なのだろうか・・いいものはいつまでもいいと思うんだけどね。

この映画もなかなかお奨めです。
テンポが速く時間を感じさせないところがいい、が、何もタイトルと同じネーミングのノートパソコン「VAIO」を使うという設定は懲りすぎでしょ。

久々の気分転換をして午後からオフィスに出る。
以前にも書いたが、平日の途中で祝日が入ると今日が何曜日なのかまったくわからなくなってしまう。こういう場合は週末に休みをまとめてしまうようなシステムが出来れば気が利いていると思うんだけど・・・今の日本じゃあ無理か。

昨日書いたプロ野球の件について追記です。
ライブドアと楽天が同じ仙台にフランチャイズを持つって話・・やってることはジイさん連中と変わらないじゃん、というのが率直な感想なのですけれどもぉ・・何か隠された美味しい話でもあるのでしょうかね・・とオジサンつい勘ぐっちゃうんだけどさ。
もう少しすっきりとした対応してくんね〜かな、ほんと。
でも彼らならば大リーグのチームをも買いかねないと思うんだけど、そうなるとますます混沌として面白くはなるんじゃあないか、とわたしはそう思います。

9月22日
どうも週の途中で休みが入ると日時の感覚がおかしくなってしまう。
週末からプロ野球についてのごたごたが続いている。
まあ、どっちでもいいんじゃあないのかって気はするが、ファンは熱い。
この際まあ、2リーグでも1リーグでもいいってことで、別のプロ野球を作った方がいいんじゃないの?
え〜っと、ライブドアに楽天でしょ、野茂選手の持っているチームがひとつ。
それにキューバあたりの野球チームをひとつくらい参加してもらうってことにして、さらに金融会社、例えばアコムやプロミス辺りが宣伝のために金にものを言わせてひとつチームを作っちゃう。
あとはシダックス辺りがよいしょと腰を上げればこれでもう1リーグ出来ちゃうんじゃあないでしょうかね。
もちろん参加費用などこざかしいことは抜きにして、但しそれぞれの球場はきちんと整備することが条件でね。そこへ行くまでの広い道路なんかを作っちゃえばなおさらよいということで。
あとは、各地方例えば四国なら四国で、実力のある高校の卒業生が地元企業に入ってプロ予備軍のようなチームに入る。
そのチームとプロリーグが対戦する・・・なんてこと考えた方が面白いんじゃないでしょうかね。
今の状態よりは少なくともまし、だと私は思うんですが。

なんてこと考えてるよりはオフィスで残業をなくす方法を考えろって?
気がついてみると自分自身がナベツネのようになっていたりして・・・。

9月16日
大阪での打ち合わせによく使う場所に、梅田のあるビルの最上階の喫茶室がある。
ここは大阪市内が一望でき、しかも平日は人が少ないので商談を行うには比較的よい場所、と僕は決めている。
今日もそこで友人でもあるT氏とお茶を飲んで、さてそろそろという時に、出入り口付近で、ちょうど隣の会議室でどこかの会社の会議があったのか、大勢の人が出てきた。
よく見ると全員女性である。
女性、ということにはなんら抵抗も、むしろオレタチ男、にとっては眺望はよい方に属するものになるわけだ。
ところが、いきなりみんなその場所で煙草を吸い始めた。
オッサン、である。
10人ほどが、中にはくわえ煙草でウロウロするものもいるのでその辺りがまるで煙幕でも張ったかのように視界が悪くなった。
服装は自由なのだろうが、みんな比較的整ったどちらかといえばお洒落な女性たちであったのだが、やっていることは中年のオッサン、である。
行為ひとつで美形が台無しになり、むしろひどく不細工な形に映ってきてしまうのは不思議なものだ。
内面性を磨く、彼女たちにはそういう基本的なことは教えられていなかったようだ。

知っている人は知っているかもしれないが、レギュラーというコンビがいる。
僕は最近彼らにはまっているのだが、その中のギャグで、
「ぶさいくぅ、なのにいいにおい」
振り付けしながらそう言うところが、僕は気にいっている。
今日の場合は、
「ぶさいくぅ、なのに口臭い・・」
となってしまうのだろうね、きっと。

9月14日
「趣味は・・やっぱり、ゴルフっすかぁ?」
なんて聞かれることが多いのだが、僕はあまりゴルフはしない。
今は世の中不景気なのも手伝ってかあまりそういう類の話も出なくなったのだが、ひところは毎日そういうふうに聞かれていたことがある。
「・・え!!ゴルフしない・・んですかぁ?そんな、あなた・・はは、ご冗談を・・」
なんて、まるでゴルフをしない人間なんてこの世にいるのか、っていうような目で見られ、
そして、
「今度ご一緒しましょうよ、是非、ね」
なんて結びの言葉が出て、それが挨拶代わりになっていた。
別にゴルフしなけりゃあならないって決まりもないでしょ。なぜさようにゴルフを敬遠するのか、それはまた別の機会に書くことにして、それほどまでにゴルフを通してのお付き合いをするようなことは、なかったのである。

でと、そうすると自分の趣味は何か・・考えてみると夜中にDVDを見ることくらいか・・まるでオタク小僧、である。

オフィスから西へ、車で行けば15分くらいの所に「新開地」という場所がある。
小さなライブハウスがあり、そこにシラッキー音楽教室がある。
ギタリスト・シンガーソングライターのシラッキー氏と出会う機会がたまたまあり、月末からそこでジャズギターの指導を受けることになった。
どこの国の人?と思われるだろうが、れっきとした日本人である。
スコッチウィスキーでも飲みながらギターの手ほどきを受けるのかな、そう甘い想像をしながら月末を楽しみにしている。

テレビの番組で「世界の車窓から」という5分ほどの番組がある。
先日たまたま見ていたら、アコースティックギターデュオの「DEPAPEPE」の曲が採用されていた。
知り合いがどんどん有名になっていくのは嬉しいことだし、もっとメジャーになって欲しいとドイツの風景を見ながらそう思った。

9月11日
オフィスのエアコンは、週末は平日よりも早く切れてしまう。
夕刻宅配便がやってくるまでに、週明けには絶対に届かないとまずい書類を作成しているときに、
ガウンガウン・・・ガ〜〜ン・・もうエアコンはこれで終わりですよ。暑けりゃあお金払ってね・・なんて機械がそう言いながら去っていった。
冗談じゃないぜ、こんなときに・・9月にはいってもまだまだ蒸し暑い日が続いている。
もう少しというときに、もうちっと気を利かせろよ・・と思いつつ1階の防災センターに電話をする。
「土曜はもう終わりです。」
あの、延長はしてもらえるんでしょ?7時までお願いしますよ。
「原則としてはですね、前日にそういうの出していただかないと・・・」
原則では出しますよ、え〜〜、何枚でも出しますから、ね、今日はあとで下もってくからさ・・・
「そいうのは、先に出してください。規則なんです。」
あのね、こっちはもうすぐやってくる宅配に乗せなきゃあいけないんだよね。すこしくらい融通をきかせてもらってもいいじゃない。
次第にいらいらしてくる・・・・・
「規則なんです。」
ちょっとね、あなた!緊急時に何でも規則きそくじゃあとおりませんよ!あとで持ってくって言ってんじゃない、いろんな仕事があって、どうしても今もっていけないって時もあるってことをさ、そういうことを・・・
わかりました、お願い、ね。お願いだから後に回してよ、おねがい・・・
「あとで、ですね・・・・わかりました・・あとでかならずですよ」
急いで電話を切り、書類作成を続行する。
コピーを大量にし、2部作成したその確認申請用の書類に正、副がわかるようにシールを張って、それからっと・・袋に詰めてガムテープで閉じる・・送り状を書いているところへ、
トントン
F山ですがぁ〜、
業者のお兄ちゃんが入ってきた。
ちょうど間に合ったというか、寸での所で間に合ったというか・・・
おっと!住所が間違ってた、新しいところに相手は引越しをしてたんだ・・
「ちょっとすいませ〜ん、あの〜、住所を書き直したいんでちょっと待っててくれる?」
「規則ですので待てません」

3年前の9・11、この日のことは僕も忘れられない。
ただ、それだけをなんだかセレモニーという形で残しながら、実際に何が原因だったのかということはこれから先永遠に葬り去られてしまうような気がする。
シルエットとしてはケネディー元大統領暗殺にダブってしまう気も、チラッとしないこともない・・
日本のメディアもその部分だけにスポットを当てて、そしてそこだけを拡大しているのだが、拡大しすぎちゃって他の部分をあまりにもあざなりにしていないだろうか。
イラクに派遣されている、自衛隊っていったいどうなっちゃったの?

9月7日
鉄骨のディテールを考えている。
風の吹き上げによる力が一番大きいからそれに対してこうしなくっちゃぁ、とラフスケッチをペンで書いていると、部屋がギシギシいい始めた。
東側は開口部、つまり窓が大きく開いているので、そこに台風による強い風が圧力をかけており、そのために音を立てている。
なんとなく建物も揺れているような気がする午後5時過ぎである。
地震なのか台風の風によるものなのか、ここんところ両方の天災がやってきているのでわかりにくい。
わかりにくいなんていってる場合じゃあなくって実は怖い。
スタッフはみんな帰して今は夕暮れ時にオフィスで一人である。
設計よりも自分の身の安全を確保した方がよさそうな気もする。
鉄筋コンクリート或いは鉄骨鉄筋コンクリートの場合はたいてい風圧力よりも地震力で設計されるのが常なのであるが、こういう日には風圧も検討しておいて欲しかった。
揺れには敏感になっているだけに・・・やばい、揺れも少しばかり大きくなってきたような・・・ちょっと一旦避難してこよう〜っと。

少し揺れはおさまった代わりに雨が降り出してきている。
鉄骨のディテールをほおり出してしばらく部屋の外へ出ていた。
外を見ると車も渋滞し始めている。今帰ればむしろ危ないかもしれない。
とりあえずは今目の前にある仕事を片付けてから帰ろうと思っている。
その頃には台風も通過しているであろうことを期待して、ですがね。

9月5日
天気はいいが風は強そうだ・・おっとっと、そんなのんびりしたことを考えてる場合じゃあないんだった。
「じゃあもう一度リザーブしたいんだけど・・」
「あちらのカウンターでお願いします。」
涼しそうなアロハシャツを着たカウンターの女性がそう言って手を差し伸べたのは、はるか向こうにあるカウンターだった。
週末でこれだけの人がロビーにいるということはひょっとすると今日帰るのは難しいかもしれない、一刻も早く・・・またそのはるか彼方にあるカウンターまで走り出した。
あのね〜、わたしは「ダーティー・ハリー」に出てくるハリー刑事じゃあないんだからね、何でこんなに走らされるの?思いながらも走った。

「大阪まで。伊丹じゃあなくって関空でもいいんですけど、ないですか?」
はるか彼方まで走ってきて、息を切らしながらスピードワゴンの左側の男似にそう言った。
「大阪まではもうないです。」
コメディアンの割には無表情でそう彼は答えた。あ、コメディアンじゃあないか・・・
じゃあ、待てよ、その近くだといいんだよな・・おっとその前に・・少しばかり遊び心が芽生えた。
「明日はどうですか?」
「明日はずべて満席なんですよね。」
あ、そう・・・せっかく少しだけヴァカンスを楽しもうと思ったのに・・
「広島あたりはないですか?」そのあたりだと新幹線がある。
「ないです」
「じゃあ福岡」
甘―い!甘いよ!おがわさーん!!
そう言われたような気がした・・「ありません」・・・だった。
「松山はありませんか?」
後ろに立っていたI平が彼に聞いた・・
「ちょっと待った、そこはやめようぜ、神戸まで5時間はかかる」却下した。
「岡山などは・・」スピードワゴンのお兄ちゃんがそう言いかけた。
「なんだよ〜近くじゃん、それはあるの?」
「いえ、ありませんでした」じゃあ言うなって〜の

「名古屋ならありますが。」
「なごやか・・・新幹線で2時間か・・よし、じゃあ、名古屋まで2枚お願い。まさかもうないってことはなだろうね。」
「あるにはあるんですが、あちらのカウンターになります。」
「え?ここじゃあないの?」
甘―い!甘いよ!おがわさーん!!
また走った。
どうして横一直線に走らされるわけ?しかも往復で・・・

「名古屋まで2枚お願いします。で、このチケットキャンセルもお願いしますね。」
カウンターにたどり着き、沖縄美人系の女性にチケットを差し出しそう言った。
しばらくコンピューターとにらめっこをしていた彼女がこう言った。
「申し訳ありません、このチケットは国内線.comのご予約なので、そこへお電話してもらわないと・・・」
「じゃあ、チケットはそれからじゃあないと買えないのデスカ?」
もう沖縄から出られないと覚悟をした。
「いえ、新たにチケットを購入するのはできますが、この分のお支払いはできないと、そういうことなんですけどぉ」

まあ、そういうわけで何とかチケットだけは手に入れることができた、名古屋行きの。

「12時45分発だから、お土産買って行こうぜ。」
「学習能力がないですね、また乗り遅れたらどうするんですか?」I平にたしなめられた。
一瞬だが、キャンセル待ちで彼を先に帰らせて、月曜締め切りの仕事をさせる。僕は、まあ月曜あたりに理由をつけてそれまでヴァカンスを楽しんでから帰ろう、そう思った。
それから飛行機、名古屋空港から新幹線の駅までバス、そして新幹線でへろへろになりながら神戸についたときはすでに日が暮れていた。

「今日は沖縄最大級の台風上陸みたいですよぉ。昨日帰っておいてよかったですね。」
「ヴァカンスどころじゃあなかったみたいだ・・・ホテルも取れてるかどうか・・」
一生懸命走ったことが報われたようだ。
「名古屋までまわった甲斐があったよな、ついてたよな〜」
そう言いながらI平と打合せを始めたときに建物が揺れ始めた。

9月4日
「これじゃあ乗れないですよ。」

搭乗ゲートの入り口で女性係員にそう言われた。
へ?え〜〜っと携帯電話はちゃんとプラスチック製の籠に入れてるし、やばいものは身につけてはいないよな・・
「あと15分で飛んじゃうんですけど。ここに来るのが遅くなったのは確かに悪かった、でもこれでどうして乗れないの?」
「ここが手続きがされてないんですよ。」
ん?・・・あちゃ〜〜、そういえば座席の番号が書かれてない・・・
そこまでの手続きのプロセスを頭の中で反芻してみた。
カウンターで予約していたチケットを買うのではなく、自動チケット販売エリアでクレジットカードを差し込んで、それからえ〜〜っと、チケットが出てきたからそれを受け取った・・・
いいじゃん、そこまでは・・・でも待てよ、ここにシートの番号が記載されてないということはだよ、このチケットを今度はカウンターでその手続きをやらないといけないってこと?
彼女の顔をそう思ってみると、彼女は黙ってうなずいた。

「どうしました?」
顔の彫りは深いが顔の付属物が中心部に集まりすぎたような感じの男性係員が出てきた。
「ふむふむ、うん、事情はわかりました。少しお待ちを。」
自分の左手の手首にペンで名前などをメモしながらその場から消えた。
ふ〜〜、時間ぎりぎりだとこういうトラブルもあるもんだ、慣れているとはいえこういうこともあるんだよな・・ホッとしてあとはその顔の彫りの深い男性が現れるのを待っていた。
離陸時間はあと8分・・・・。
「3階へ行ってください。」
こちらへやってきた男はそう言った。
「3階?これから?」
「はい、そうです。」
え〜い、くそ、それならそうと早く言えよ!
文句を言っている時間もないので、エスカレータを駆け上り、はるか向こうに見える受付カウンターまで走った。
ずらりとリラックスをしすぎたような若い連中が並んでいるところに割り込んで、
「あと数分で離陸しちゃうんです、申し訳ないけど、手続きを・・・」

「あ、これ、もうだめです。」

久しぶりの那覇空港はとても綺麗にリニューアルされていた。
しかし広くなるのはいいけれど、搭乗口と受付カウンターまではどうしてこんな動線にしちゃったの?と思うくらい不便なまでに離れていた。
今日神戸に帰れなければ明日は台風できっと帰れないだろうと、そういう思いもあっただけに、広い空港の中を走った。その結果が
「これもうだめです。」だって。
どうするか決断を迫られていた。
ガラスの向こうには、台風の影響なのかエメラルドグリーン色はしているが白い波が立ち始めた海が広がっていた。

9月2日
旅に出る前はたいてい徹夜、ということがこの仕事を始めてからは当たり前になっている。
朝方まで仕事をし、バッグの中に文庫本を2、3冊詰め込んで飛行機に乗り込むというのが常である。
そして今日もそのパターンで今もまだデスクにかじりついている。
明日は朝一で空港へ行き、そして飛行機に乗る。そこでやっと解放感を感じることができるまでその瞬間の快感を得るために今は歯を食いしばって仕事をしている、というわけだ。
どこへ行くのかって?
私はね、夏休みもとってないのですよ、今年わ。
週末ほんの少しだけの解放感を感じるために、行き先は伏せておきましょう。もちろん携帯は通じませんものね、はい。
夜、一人で南十字星を見ることができる、そういう場所でのんびりさせていただきます。

ん?そういえば台風が近づいてきてるんじゃなかったって?
そうだったぁ〜・・あまりの忙しさで僕が雨男だってぇの、忘れてた・・・・・。

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