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8月30日
「Cさん、日本語上手になったね。」
C君はまだ日本語に慣れてないかと思いながら、ランチ時に話をしていてふとそう感じてしまった。
「日本語を覚えるのはやっぱり難しいわよね〜」
「ハイ、トテモムツカシィ」
「ワタシは、というのはワシィ、だったわよね」T女史がそう言った。
「ワシ?」
「ソウデス。アイアムはワシィ、デス」
「ね、そうでしょ・・ワシィ」
「おう!ワシヤ!・・それじゃあ清原じゃん」
「オガワサンノバアイハ、ワシィシャオウゥ、ツァンデスネ」

「わし、しゃおっつぁん?」

「ヒゲ生やしてそういう言葉しゃべると、中国のペテン師みたい、クワッハッハッハ」
T女史はおにぎり大のご飯粒を僕のほうに飛ばしながら笑った。
たしかに、わし、おっさん?・・なんて変だよな。
それにしても中国のペテン師、はないでしょ。

8月29日
バブルの時期、僕はサラリーマンをやっていた。勤めていた事務所の入っているビルの前には真っ白なロールス・ロイスが置いてあった。バブルが崩壊した頃、真っ白なロールスは姿を消し、ちいさな軽自動車が止まっていた。

「軽で移動するっていうのはどうだい?」
「JAGUARからいきなり軽、ですかい?・・・代車ですか?」
「いや、新車なんだけど・・」
やっぱり、だめだ。
この3週間ほどいろいろ車を見てきたし(灘区にある光岡自動車も行った)、ネットで全てのメーカー(もちろん光岡自動車も)の車種を見た。
一番心惹かれたものに対しては、周りの反対が激しかった。
高いというのは当たり前で、シートの数が少ないとか、車体が小さい、転んだら痛そうだ・・
え〜え〜、わかりましたとも。そりゃあ皆さんの言うことはもっともだと思う。
でも、ほしいんだも〜ん。
まるで子供だ。

で、決めました。
今の相棒が深い眠りにつくまで、僕は彼とともに行動するってことをね。
彼以上に心惹かれるヒト、はあるけれども今は彼とともに行動しようと、ね。
地震の後に出会って、今までずっと僕を励ましてくれたし仕事にも協力を惜しまなかった。
今週末はボディーに取り付いた鉄粉を落としてやろう。そして、最後にゆったりとワックスをかけてあげようと考えている。

8月27日
夜遅くにいろんな人が集まってくる。
集まればギターやピアノ、そしてブルース・ハープを吹きながらのジャム・セッションが始まってしまう。
素人風の年配の女性がその演奏を聞きながら楽しんでいるのかと思いきや、いきなりマイクを持って歌い出す。
アメリカ南部の片田舎にあるパブでビールを飲みながら楽しんでいるような、そういう空間にいるような気にさえなってくる。
ただ、こういうセッションが何日の何時から何時までやってますよ、ってことは何にも決まっていないというのがこの店の特徴でもある。
あくまで気が向いたら、である。
「勝手に冷蔵庫から氷出してね」
自分の好きな飲み物を自分で勝手に作って、ライブを楽しむ。
そういう場所が「新開地」にはある。

金曜の夜、「森本硝子」の一角にあるライブスタジオで、「シラッキーギター教室」の後そこは、ライブハウスに変わってしまう。変わらない場合も、ある。
ギター教室の後、ビール飲みながらライブを楽しむ。これは素敵な遊びです。

「あ、オガワさんは車だし、酒ダメだよね。カフェオレ、作っといてあげたからね」
アルコール抜きのジャズ&ブルーズライブはちょっとつらい。

8月25日
「夜中の番組であまりにもこわ〜いのやってたから思わず会社に電話しようと思ったのよね〜」
T女史がランチ時にそう言った。
「そんな怖い話を、夜中に一人で仕事してるオレに聞かせてどうしようというんだ。それでなくても、怖い締め切りに追いまくられてるんだから、これ以上怖がらせないでくれ。」
「鳥肌立つくらいにね・・・」
「仮に夜中にそういうの出てきたら、仕事手伝ってもらうよ、な、I平」
「いやですよぉ〜」

そういう手の話は、信じるか信じないかでいけば信じるだろうとは思う。思うけれど自分では生まれてこのかた見たことはないし、その気配もない。それよりも現実の方が怖いし、人間の方が怖いと思わせるような事件が毎日新聞に載っている。自分の身は自分でしか守れないのだから、それ以上のことで余計に悩む必要はないと、今のところそう思っている。

夜中にひとけのないマンションに帰り、エレベーターに乗っているときはできるだけ余計なことを考えないようにしてエレベーターを降りたとき、やっと仕事から離れた気持になる。
エレベーターを降り、階段を下りるときに壁に張り付いている原色の大きな蛾を発見したとき、
「こ、こわいぜ・・」
鳥肌が立つような怖さがそこにはあった。

8月24日
高校野球で優勝した高校の暴力事件が今になって発覚したというニュースね。
今更そんな話が出てくるなんて、誰かがチクッたってことなんだろうけど、もう少しマシな決着の付け方があったんじゃないの、と思う。
別に暴力を肯定するつもりでもないけれど、今に始まったことでもないだろうし、世間に出るか出ないかだけだったわけだろうからね。
そういうところを分析してみると、マスコミが鋭くなったか、当人たちの動きが稚拙になったか・・・・こんなこと考えているうちに日付が変わってしまったじゃないか。

「来年からはIT高校野球で行きましょう。ネット甲子園というものを作りますからここで試合をすれば暴力事件なんてありえないでしょ。」
各高校の選ばれた9人がモニターの前でコントローラーを握る。
スポンサーは任天堂になったりして。
馬鹿なこと言ってないで帰ろうっと。

8月23日
「昨日はあまりの暑さに次の打ち合わせに行く前にさ、藁天神の境内で傘放り出して涼んでたんだよな。境内で『アミノサプリ』飲んで一休み。空を見上げると、飛行機雲と飛行機の機体が青い空に映し出されて綺麗だった。夏の日の青い空、いいでしょ!」
「それって、リストラされたサラリーマンのオッサンが所在なさげに時間つぶしてるように見えたんじゃないですか。」
I平が蕎麦を食いながらそう言った。
確かにそれはある。

夕方外に出たとき、今までの蒸し暑さが幾分和らいでいることに気がついた。
夏の終わりが近づいている。

8月22日
雨男だからといって、以前折りたたみの傘をオフィスのバースデイプレゼントでもらったことがある。
確かに折りたたみの傘は、用がなくなれば文字通り「折りたたんで」バッグの中に入れ込めば邪魔にはならないので便利ではあると思っている。ただ、この折りたたみの傘は、たたむときに手がびしょぬれになっちゃうし、それをバッグに入れる為には傘のカバーというのか、水がこぼれないようなそういうものに入れてしまわなきゃダメでしょ。
こんなものをバッグに器用にしまってることはまず無い。
だもんだから必然的に、手がぬれるのがイヤだ → 傘をしまう袋みたいなもの、を持っていない → 折りたたみの傘はいやだ、という図式が僕の中で成立している。

午前9時30分には京都の二条駅の前に行かなければならないので、少し早起きをして土砂降りの中電車に乗る。電車に乗った途端に雨が上がり、京都に着いたときは青い空と京都独特の身体にまとわりつくような暑さの気候に変わっていた。
こんなことなら多少雨にぬれたとしても傘置いてくるんだったなぁ・・後悔しながら耐震診断の現場調査を2件行った後、次の打合せに向かう。クソ暑いのに、上着を左手に巻きつけて腕に傘をかけ、右手にバッグと「アミノサプリ」を持ちながらの移動だ。
傘と上着をそっと捨ててしまいたいような気持に駆られながら最後の目的地に向かう。
解放されたのが午後6時過ぎ。
いつもどおり、京都駅前の「新福菜館」でラーメン(並)とチャーハンを食べる。
これで長かった今日も終わる、あとは帰るだけ・・ん?なんか身が軽くなったような気がすると思ったら傘をラーメン屋に置いてきた。
京都駅が見えているところまで来ているのに、取りに戻るかどうか少し思案する。
くそ!捨てて帰りたいのはやまやまだけど、今日一日付き合ってくれた愛着が少し残っている。結局、またひき返して傘を抜き取り、上着を左腕に巻きつけ、傘を上にかけた。
今度忘れたら捨てていくからな。折りたたみも嫌いだけど、折りたたみじゃあないやつはもっと嫌いなんだ、と自分に言い聞かせながら京都駅に戻っていった。

8月20日
「カネさえあれば何をしてもいいのかぁぁ!」
「いいんですよ、これからはITでも政治が出来るようにしてあげますから」
という流れが今の堀江氏の中にあるような気がするね。

国会もネット上でいいところは公開して、ヤバイところは隠すことなんてすぐ出来ちゃうでしょ、それに、選挙も全て国民が自宅でネット投票すればいいわけです。
そしたら老人でも簡単に投票は出来ちゃう。投票率もググッと上がるわけですよ。ね、いいでしょう?
ほほぅ、それはいいですな、簡単で。しかもホームページが充実すれば国民の皆様にももっとアピールが出来るしね。
そうそう、いちいち演説しなくっても、自宅に居ながらにしてそういう情報は集められますよ。それになんてったって、今までのようにお金かかんないでしょ。ぜ〜〜んぶ面倒なことはわが社にお任せあれ。ネットでいいところだけ広めちゃいますから。
余ったお金はあなたたちの飲み食い代に回せばいいじゃあないですか。
ふむふむ、それはいい考えですなぁ。面倒なことより、まずは縄張り広げないとね。
もうひとつのメリットとしてはね、ほらパソコン上で「民主党」って投票するとするじゃないですか。
なにぃぃ!
まあまあ落ち着いて。で、ここのこの部分を操作すると「民主党」→「自由民主党」になっちゃう仕掛けがあるんですよ。
おおぉぉ、こういう仕掛けもITでは出来るのかね。
当たり前でしょ。な〜〜んでも出来ちゃう、ワタシにかかればね
「カネさえあれば何をしても、いい!ってかぁ」

2006年にはきっとそうなっている、という映画でも作れば面白いんじゃあないかと思ってるんだけど、映画よりも現実の方が早かったりして。

そのときの映画の題名は、
「IT」
に決まってるでしょ。

8月19日
お盆休みを返上して、夏休みの宿題にあたる大量のスケジュールをこなしきった。
今まで培った経験を生かし、まあつまりは切り抜けのうまさなんだけど、休み明けに文句を言われないよう、メールをどんどん送り、とにかく辻褄を合わせることに成功した。
これで夏休みが取れるかなと思っている週末、
「月曜9時30分に二条駅で待ってますんで」
この電話で遅い夏休みも消滅してしまった。

8月18日
「日本のテレビドラマは、○○殺人事件、なんていうものばかりですね。」
ランチ時、C君がそう言った。
確かに、新聞のテレビ欄を見れば、長々と説明が書かれてその最後に、・・・・殺人事件」とタイトルだけで誰が主役で誰が犯人役、そしてどの場所でロケをしているのかまでわかってしまうようなものが、おおよそ20年ほど前から続いている。
「湯けむり、美人三姉妹!殺人事件」
で、キャストを見れば、フンフンなるほどこういう風なストーリーなんだ、ってことまでわかっちゃうようなのばっかりだけど、つい見てしまうほど暇な時間は今の僕には、ない。
(昔はあった)

「あの早くに亡くなった女流作家いたじゃない」T女史が思い出したようにそう言った。
そういえばいたような気がする。
「和久俊三?あの人のストーリーは好きなんだよね、京都殺人案内とか赤カブ検事のストーリーなんかは・・・」
「女性だって」
「山村みさ?」他からそういう声が上がった。
「そうそう、あの人9本ほどの原稿を同時にかかえててね、で、血管切れちゃったみたいね〜。そんなに仕事抱えてるとそりゃあポックリいくわぁ」
「あのぅ、僕もそのくらいの仕事抱えてるんですけどぉ」
「同時に数本の原稿書いていくんだって、頭の中の構造が違うんだろうね、うんうん」
「あのぅ、僕も同時に電話で数本の仕事並行してやってるんですけど・・」
「それだけの仕事かかえてるとお金には不自由しないわよね〜〜」
お金に不自由しながらポックリいくのだけは避けたいと考えているので、今日は仕事を終えることにする。

8月17日
夜、駐車場に車を止めて自宅へ向かう途中、道でコリー犬が暑さでへばっていた。
「こんばんは、いつもは朝散歩させられてますよね。」
「あぁ、あれはお隣のSさんのところの犬ですよ。同じ種類なのでね」
年配の女性がそう応えた。
「よく似ているものだから、失礼しました。でも相当へばってますよ、この子」
「暑さに弱いんで、すぐに座っちゃうんですよね〜」

モモもそうだ。
出来るだけ陽射しの弱い時間帯を選んで散歩をさせるのだが、アスファルトの道はすぐにへばってしまう。最初は舌を出してハァハァいいながら歩いているのだが、まあ、汗腺の少ない犬は夏場はたいていそうする。
そのうちに、舌が暑さのせいで口の横からだらんと出るようになってくる。
こうなると、「バテチャッタヨ〜」ということになる。
赤ん坊もそうなのだが、身体が道路に近ければ近いほど暑さの影響は強いということなのだろう。

明け方まで仕事をして、自宅に戻ってきたのが朝の4時頃。
駐車場に車を入れているときに同じマンションの住人が犬を連れ散歩に出てきた。
「こんな朝早く散歩ですか?」
「この時間帯の方が涼しいからな、いっつもこの時間帯や」
「まあそれはそうですね」
「それよりあんたこんな時間に帰ってくるんかいな?朝帰りかい、よろしな・・はっはっは」
「あの〜、仕事でね、仕事がどうしても押しちゃって」
ブルドッグはフガフガいいながら僕の足に絡んでくる。
「たまにははよ帰りや」
にやっとしながらブルドッグと山の方へ消えていった。
こういう時って、仕事でというのはむしろ言い訳がましく聞こえるものなのだろうか。
口の横から舌の先が出るほど仕事やってるんですけど、ワタシ。

8月16日
「48時間」という映画の中で印象的だったモノがある。
ジャック・ケイツという刑事が乗り回していた愛車だ。
年式のかなり古いキャデラックで、
「で、この次はどんな車買うんだい?」と、囚人のレジー・ハモンドが聞いたときに、
「この車と同じ色で同じ年代のものを、な」
確か、そのような答え方をしていたと思う。
これですよ、これ!このこだわりは確かに一世代前の考え方かもしれないが、やはりこれくらいのこだわりと洒落っ気は持ちたいものである。
「で、これだけ仕事頑張ったんだ。次はどんな車買うんだい?」

「コイツと同じ色、同じ年式のものを、な」

ガンメタのJAGUARのボディーをポンとたたいて、そう言いたいものだ。

8月15日
左方向のウインカーを点けながら、二車線のど真ん中をゆっくりと走っている車が目の前にいる。山手幹線東行きの、王子公園付近でのことである。
こういう運転をするのはどういう状況を想定しているのか理解に苦しむ。
左のウインカーが点いてはいるものの車線を変える様子はないので、左側をその車を抜きながらチラッと様子を見た。
ヤクチュウのヤクザ、か無免許運転の小僧、それとも・・と思っていたのだが、かなり年配のオヤジ、であった。
お盆の頃は街中の交通量は減るものの他府県ナンバーの車がその分増えるものだ。
それだけではなく、年配の運転手も増えているような気がする。
出掛けに六甲の交差点で、いきなりブレーキを踏み、それを繰り返しながら進んでいるカローラを見た。
なんなんだ、この車は、と思いつつ、またこれも抜きながらチラッと見ると、ハンドルと頭の高さがほぼ同じくらいなまでに小さな婆さんが運転していた。
前見えないよな、それじゃあ・・・

いろんな事情で車を運転しなければいけないことはあるかもしれないが、流れに乗れないくらいに状況判断が出来ない年配ドライバーは潔く運転をすることを諦めたほうがいいと思う。
それと、携帯で電話しながらナビゲーター見ながら、煙草吸いながらの他府県ナンバーの観光旅行車ども、ウインカーもつけずに急に停まるんじゃあないよ!
二人っきりでのドライブは楽しいかもしれない、楽しいかもしれないが、その後ろを走っているワタシハね、夏休みないんだから。

8月14日
世界陸上が終わった、ようだ。
「ようだ」と書いたのは、見たいのはやまやまだけれども、見たくないシーンが多いので見なかった。で、最終だけチラッと見たらもう終わってた、そういうことです。
2年前にも同じこと書いたんだけど、どうしてスタジオ中継があんなに長く、しかもどうしてO.Y.なんだ?ってことね。
今年の夏休みに当たる日はこの日曜だけなんだけど、こんな番組が延々と続いちゃうと余計にストレスが溜まっちゃうものです。

8月13日
お盆休みに入った週末の土曜日。自宅周辺でも心なしか静かになったような気がする。
周辺での工事の音も減り、バルコニーで朝からガシガシ鳴いていたセミも今日はいない。
オフィスに出てみると、いつもならばセミのようにガシガシ鳴きまくっている電話もなく、なんと清々しい気分で仕事が出来ることか。これならば来週1週間ほどは世の中お盆休みが続いてくれないかと、デスクの上に足を上げてそう考えている。

「あれ?塩ここに置いてあるっていうのはなんかあったの?」
サイドテーブルに塩の入った器がいつの間にか置かれてあった。
「変なのがこのあたりうろうろしてたとか、そういうんじゃあないだろうね」
お盆の時期だからこそ何かあるのか、そう思った。
「あ〜、それね。ちょっと掃除したときにそこ置いてただけ。な〜〜んにも心配ないって」
笑いながらT女史はそう応えた。
「それならいいんだけどさ、こんなに大量の塩ぉ、こんなところに置かれてると気になっちゃうよ」
「気にしない、気にしない」

休み中、電話はないものの別のものに仕事邪魔されちゃったりしてね。

8月12日
ついに夏休みが消えた。
やることは多いのだが、暑さに負けちゃって身体がついていかない・・・というのは言い訳じみているが、言い訳である。

金曜日は夕方からシラッキーギター教室もある。
そういうわけで、今日はほんのわずかの夏休みの替わり、ということで仕事のことは忘れ、ギター教室の後、こっそりと羽を伸ばすつもりである。
え?どこでって?そ〜ん〜なこと言えないもんね。
たまには充電しておかないと。

**********************************
「パーティーの成功おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
カウンターの向こうで低い声の持ち主がそう応えた。
たまたま他には客がいない「志賀バー」でのこと。
成功を祝して二人っきりで乾杯をすることが出来た。
「ノッカンドゥー」をオンザロックスで2杯。
いつもの志賀バーであることを確認してから店を出た。
これが大人の羽の伸ばし方、である。

8月11日
「オガワさぁ、浅草の花火問屋で花火大量に仕入れてきたんで、今夜は軽井沢で派手にやろうぜ。目立つから、うん」
「それは確かに言える。言えるけどなぁオオクラ、この狭いホンダシビックに男が四人ぎっしり乗ってさ、後ろには人一人分の花火乗っけてんだ。ぶつけられたらたちまちこの高速道路で花火大会始まっちまうんだぞ。タナカはニシダと二人でセリカGTでナンパしながら軽井沢に向かってる。タケナカとカワバタは新車のソアラだよ。よりによってなんで一番狭いこの車に男4人と花火一人分が乗ってるんだ。おい!前見て運転しろって!」
「まあ、硬いこと言いこなしって。夜が楽しみだよ、な、アマノ」

今から25年ほど前、研究室の夏合宿で軽井沢へ行くことが決まり、猛暑の中エアコンの効かない中古のホンダシビックで移動する最中の一場面である。

連日の締め切りのプレッシャーに耐え切れず、夕方気分転換に三宮商店街を歩いているとき、ふと立ち止まったところが花火屋だった。珍しく人が入って賑わっているその店を外から眺めながら、学生の頃の一場面を思い出してしまった。
今では花火が暴発するよりも締め切りのほうが怖くなっている。

8月10日
週末の暑い日、外から帰ってきて部屋のエアコンをつけてもらうために1階にある防災センターに届出の用紙を出す。
平日は6時以降は有料で午後10時まで。土日は届出がない限りはエアコンはつけない。
このビルはそういう煩わしいシステムになっているのだ。
「暑いですねぇ、申し訳ないけど、またこれお願いします。」
用紙を「ダンカン」似の男に手渡す。
「明日の分ですか?」
「ん、これ今日の分ね、これから仕事なもんだからエアコンつけてもらわないと暑くって」
「カナラズ、ぜんじつまでにおねがいします」
「だって今日のスケジュールなんて当日になるまでわかんないでしょ」
「カナラズ、ゼンジツマデニオネガイシマス」
「あのね〜、週末に現場に行って暑いさなかに現場で仕事して汗ぶったらしながら帰ってきてるんだよ。今つけて欲しいんだけど」
「カナラズ・・」
「おねがい、ね!!」
「イチオウウケトッテハオキマスガ・・・」

「あのね〜、どうして有料でお金払ってんのにあんなふうにいわれなくっちゃいけないんだよぅ。大体があのダンカン暗いんだよね。」
「あ〜、あの人ねぇ。この間すれ違ったときに小さい声で「くら〜い」って言ってやったの」T女史がそう言った。
「あのねぇ、君のその小さい声って普通の人にしたら大声なの。絶対ヤツには聞こえてるよ。だから嫌がらせのように、カナラズ・・って言ってるんじゃないの?」

防災センターには、その「ダンカン」以外に「宇梶剛」「宇宙人」「普通のおにいちゃん」 がいる。
これ見てたらまた、
「ウケツケマセンノデ」
と言われそうだけど。

8月9日
朝一から車に乗り込んで湾岸線を南へ。和歌山の有田方面へ向かった。
打合せの後、渋滞の大阪市内へ入り、車がすっ飛んでくる環状線を掻き分けながら湾岸線に乗り神戸に戻る。往復約250km。
暑さと前日の睡眠不足がたたり、もうネタも尽きてしまったような気がするので今日はこれにて終了、です。
お疲れ。

8月8日
例えて言うならば、同窓会へ来てるんだけど誰も知っている人がいない空間、そういう夢のような場所へ僕は来ていた。
日曜の午後7時、「志賀バー」の10周年パーティー会場でのこと。
たいていが2〜3人連れで来ているようで、あちこちのソファに座りシャンパンなどを飲みながらくつろいでいる。

ドコニスワレバイインダ

「あ、どこでも空いてるとこでいいですから」
スタッフの男性はそう言ってはくれるのだが、たいていどこの席も女性が数人座っており(まあこういうパーティーならば当たり前なんだろうけど、いつもオッサンばかりのパーティに慣れている僕は慣れていない)、そうは言われてもね・・・・
ステージのごく近くの円形テーブルのみまだ誰も占拠していない様子だったので、思い切ってそのテーブルに向かって一歩足を踏み出した。
なんせ「月世界」である。
ステージに向かうようにレイアウトされたソファー、が主体となっている。
僕が向かっている円形テーブルは、「一応置いときますけど、ダンス始まったら端へどいてよね」席であるかのようにひっそりと置かれてあった。
ステージには大きなスクリーンが設置されており、志賀氏の軌跡が映像となってずっと流されている。プロの手によって作成されたのであろうこの映像は見ごたえのある素晴らしいものだった。
僕にとっても会社を起こしてから10年。
「こういうのぼくもやりた〜い」
心の中で思ったのだが、賛同者は皆無だと思うので、ま、この志賀さんのパーティーを自分のパーティーに置き換えて楽しもうと考えていた。
4人席で、スクリーンに一番近い席で生ビールを飲む。考えてみれば特等席だ。
「ここ相席でもよろしいですか?」スタッフの男性に言われた。
「いいですよ」
女性の一人でも座ってくれると、ますますその特等席の価値は高まる、と思っていた。
「こちらです」スタッフが椅子を引いて、男3人が座った。
ま、いいや、いいですよ、現実はまあこんなもんでしょうからね。
スクリーンに映し出される映像はいい感じだ。
「アシ」を送ってね、と志賀氏に言われ、「足を広げた種田」はさすがにスクリーンに登場してこなかったが、自分の足(靴を履いただけどね)の隣に長男の履き古した29cmの靴、を置いた写真を、その経過をメッセージにして送ったものが映像化されていた。
「志賀さんと僕だけにわかる絵ですね」
「ちゃんとスタッフには説明してますので・・」例の低い口調でそう言ってもらった。
ここ数日は準備のためにろくに寝ていないのに、一人一人にちゃんと気を配りながら話をしてくれる志賀氏には頭が下がる。
最後にステージに上がった志賀氏の挨拶。
「ありがとう」と頭を下げたときに、「足震えてるわ」と言った志賀さんにカッコよさを覚えた。

「あ〜いうの僕もやりたいんだけどぅ」
電話ですよ・・・
次何すればいいんでしょうか・・・・また電話だよ・・・
待ってるんですけどね、まだ出来てないのぉ?
腱鞘炎で手が震えることがあっても、足が震えるようなステージにはまだ上がれない。

8月6日
昨日、駅前の立ち食い蕎麦屋で「海老天蕎麦」を食っていたとき(こういう場所では、「食べる」というよりは、「食う」と書いたほうが臨場感出てると思うのね)、若いカップルが入ってきた。こういう場所へ「若いカップル」が入ってくるというのは珍しい光景である。
男がセルフサービスの水を入れている間に女がカウンター内のオバちゃんに金を払う。
「二人分ね」
「おにぎりは、ありますか?」若い兄ちゃんが聞いた。
「悪いけど、そこにあるだけしかないんだよね」
「それでいいです」
と言いながら彼は彼女の財布から小銭をつまんでカウンターに置いた。

今日は昼前に阪急電車に乗り、京都へ向かった。スケジュールの都合がどうしてもつかなかったので、京都へは2日連続で行くことになってしまっており、今日はその2日目だ。
「今年最高の暑さ」の京都は、暑かった。
四条大宮の駅で切符を買おうとしていると、若いカップルが隣で切符を買っている。金を出しているのは女性の方だ。
「ここ押すと2人分の切符でてくるんやでぇ」
「ほんとにぃ!てんさいやなぁ!」
もう一度言う、2人分の金を払っていたのは女性の方だ。

どちらが払おうが知ったことではないが、普通お金払うのって男じゃあないのかしら。
それとも最近は、「別にどっちでもいいじゃん、そんなこと」になってしまったのだろうか。
一緒に食事に行って割り勘にするというのはわかる。
だが、デートに誘って相手に勘定を持たせる、っていうのは社会通念上理解に苦しむところである・・・風俗評論家のような口調になってしまった。

ここで書いた2例は、どちらも女性のほうが男に対して、
ねぇねぇ、あしたはわたしがぜ〜〜んぶお金持っちゃうからあそびにいこか?
ほうほう、それならいきますかね
そういういきさつだったのかな。

今日は大阪と神戸で花火大会がある。
「ぜ〜〜んぶもちます女」と「いきましょうか男」がどのくらいの割で出てくるのか気になるところでもある。
おっと、そんなこと気にしてないで帰らなきゃあ。
時間間違ったら自宅までの道が他府県ナンバーであふれてそうなのでね。

8月5日
今週の日曜日、三宮の東門街というところにある、クラブ「月世界」にて「志賀バー」の10周年パーティーが催される。
不良会員ではあるが、NO.423の通し番号が入った招待状をいただいているので何があっても参加するつもりである。
クラブ「月世界」は神戸でも指折り、老舗の「キャバレー」であり、今は高級パーティー会場となっている。

午後7時からだ。
「何が起こるかわからない、何も起こらないかもしれない」という風にカードには銘打ってある。
暗くなった会場の中、スポットライトに照らされ舞台上部からゴンドラとともにタキシード姿の志賀氏、が舞い降りてくる。
ゴンドラからステージに降りた彼の周りに数名の女性が走り寄ってきて花束を手渡す。
その彼女たちの肩に手をまわし、
「こんばんは、志賀でございます。」
例の低いクールな声で一言。この一言からパーティーが始まる・・・・。
こういう展開になるのかなと一瞬想像してしまったが、おそらくそういうことはないだろう。

「予測不可能シリーズ最高最大のノンストップアクション!」
まさか本当に舞い降りてくるのではないかと、不安になるところだ。
「お祝い・お花その他一切受け付けます!」
花束、やっぱり受け取っちゃうのかな。
「これは私の代表作になる」
タキシードか・・・
日曜の夜が楽しみである。

8月4日
構造計画を数件明日までに処理してしまわないといけないという状況の中、太田裕美の「木綿のハンカチーフ」を聞きながら仕事に集中していた。
こういう70年代〜80年代の曲をたまに聞くのも悪くはないし、結構集中できるものだ。
一通のメールが入る。イヤフォンで聞いているのでメールが入るとちょっと耳につく機械音が鳴る。
「アロハ!9月のウェディングパーティだけどさ、ハワイだから。おがわちゃんどうするか決めといてね」
大学時代の悪友で、今は東京の初台で設計事務所を開設しているUからのメールだった。
つまり、彼のオフィスのスタッフがハワイで結婚式を挙げるから来ないか、というお誘いのメールである。
そりゃあ行きたいのはやまやまだが、仕事の状況からするとちょっと無理かもしれない、ということを直接電話で伝えた。
「いいじゃん、東京で仕事あるからってここまで来れば、一緒に成田からハワイ行けるぜ。 1泊2日だったら大丈夫!」
物理的に無理である。
こういう話をしているときはお互いになぜかその頃の時代に戻ったような気持になる。
「ハワイで一緒に遊ぼうぜ。9月だからね、くぅがぁつぅ!ね!」
学生時代と話をするときの感性はお互いに変わらない。
どうせ行くなら、イルカが近くまでやってくるハワイ島がいいな。青い海と澄み切った空を一瞬頭をよぎったが、文字通り「一瞬」だった。
8月一杯でタイトな仕事を全て片付けてしまうには、まずはお盆休みを忘れなければならない。土日も仕事をして・・

「もう少し考えさせてくれ」

そういって電話を切った。
まずは目の前の仕事を片付けるか。
再びイヤフォンを耳につけたとき、松田聖子の「青い珊瑚礁」がかかっていた。

8月3日
羽田の停電事故であらためて今は夏休みの時期であることを実感した。
停電なんてけしからん!それに停電にかこつけて季節を感じるようなことを書いてるというのはよほど書くネタがないんじゃあないのか、それもけしからん!とお怒りになる人もおられるかもしれないが、こういうトラブルは今に始まったことでもないし、確かにこう暑いと書くネタは、ない。
事故についての原因は、職員の「警報」の見落としだったらしいが、こちらの方はこれだけ暑くっちゃ〜しょうがない、では済まされはしないと思う。
結局あれでしょ、全てがコンピューターによってコントロールされているわけだから、それが間違ってんなら、そのソフト作った人の責任でしょ。私は関係ないもんね、で括(くく)られていることが多すぎる、とそう思うわけですよ、アナタ。
飛行機の頻繁なトラブルも、オートでの操作に慣れきっちゃっててマニュアルで操作することが次第に面倒になってくる、操作できる人も減ってきているってことも原因のひとつらしい。医療関係も、政治も・・政治は昔っからかわらないか。
その専門ではないが、ソフトを作る技術はすぐれている。そういう人達によって作られたものを専門家が利用している。いざというときはその両者が責任の擦りあいをするというようなところがテレビのモニターの中で偉い人が出てきて頭を下げる原因となっているんじゃあないかって、そう思ってるんですけどね。
今仕事にしている建築の仕事もそうだ。
ソフトにデータを入れ、アウトプットを見ながらそれを図面化するということではまったく同じである。
「パソコンの中にいれりゃあよ、答えが出てくるんだから、構造屋さんって楽になったんじゃないの?金額もその分割り引いといてくんないかなぁ」
こういう客がいたら間違いなく、少々品のない表現で恐縮だが、ケツ蹴っ飛ばしますね、ええ。
だが少し前の時代はよくそう言われた。
「まあ必要条件ではあるけれど、十分条件じゃあないので、それだけでは商売は出来ないでしょ、ははは」
入力だけならば素人でも出来る。そこからがこっちの仕事じゃあないの。
こっちはからだぁ張ってやってんだから、気楽なこといってるとぶっとばされっぞ!
笑顔で答えながら心の中ではそう思ったものだ。
今でも時々そういうことはあるが、もう慣れちゃってるので相手をにらみつけるだけですませてはいますがね。
オットすじをはずしちゃって・・っと何を書こうとしたのかというと、ああ、そうそう、この時期に遠方に出張するときはスーツ着てられないってことをね、それを書こうとしたんだけど、時間も時間だし、これについてはまたの機会に書くことにします。

8月2日
地下鉄のホームを歩いているとき、待っているとき、或いは横断歩道を渡るときも携帯でメールを打ちながら、という姿がいやに目に付く。
このごろの外の風景はそれがごくありふれた風景になってしまっている。
梅田に出て、そこから谷町線に乗るために人の混み合った、というよりはめちゃくちゃに交錯している通路を歩く。
携帯でメールをしながら自分を中心に歩いている人がほとんどなので、目的地に向かって真っ直ぐに歩く、ということが難しくなってくる。
で、地下鉄に乗るとまたメールだ。
ま、いいでしょ。別に人のことだから文句はありませんとも、文句ないけどね、人にぶつかったら「失礼」の一言くらいは言ってもいいんじゃあないでしょうかねえ、えぇ!どないやねん!!
・・・ゴホンッ、夏場はあまり腹立てると身体にはよくない。

携帯で話をしながらもうすっかり緊張感のない顔で歩いているオッサンも、もちろんまだいるけれど、メールを打ちながら、頭の中は自分のテリトリーの中だけに入り込んじゃってる人は多い。
これじゃあ、「気遣い」や「思いやり」っていう言葉が1年後には広辞苑辺りから消えてしまっても仕方ないかなと、そう思うわけですよ、ハイ。
「あれぇ?さっきまで充電してたのに、もうバッテリーが切れかかってるよ・・・やっぱりSONYはだめだぜぇぇ〜」
「また調子悪いんですか?」
大阪へ同行していたI平が気の毒そうに僕の方を見てそう言った。
「もうね、SONYなんか買わないもんね、こんなに扱い難い携帯なんて、もうだめ!もういや!!」
携帯に向かって文句を言ってるオッサン、は最近余りお目にかかれなくなってきてはいる。

8月1日
オフィスのエアコンは午後10時で切れてしまう。それを承知でこのオフィスに移ったのが2年ほど前。これで3回目の夏を迎えるわけだが、毎年当たり前のことだが、暑い。
ガコンガコン、ビル全体のエアコンが切れる前にそういう音を立てながら、切れるともう10分もしないうちに微熱のあるオッサンが身体に絡みつくように暑くなってくる。
「このS君のパソコン、変な音してますけど・・」I平が帰り際にそう言った。
「あぁ、それね、いつも帰る前に消すんだけど、夜中はいつもそんな音立ててるよ。」
「なんか変じゃあないですかぃ?」
「お盆前だしね、まあいろいろあるよ」
「そうなんですかぁ・・・」
「むしろなんか出てきたほうが涼しくなっていいんじゃあない?」
「ドアを開けてて変な人入ってくるよりもその方がいいですか。」
「そういうこと」

恒例の夏場の帰り際の挨拶になってしまった。

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